研究課題
ダウン症は白血病のリスクが高く、5~10%の新生児はTAMと呼ばれる前白血病を発症し、その20%は生後4歳までに真の白血病(DS-AMKL)へ進展する。最近我々は、GATA1変異を持つTAM細胞にコヒーシン複合体/CTCF、EZH2などをコードする遺伝子群に高頻度に変異が生じていることを発見した。前白血病の段階であるTAMクローンを根絶することができれば、DS-AMKLの発症を予防できると考えられる。本研究の目的は、DS-AMKLに進展するTAM患者を正確に同定する画期的な方法を開発し、白血病予防法を開発するための基礎を築くことである。本年度は、以下の2点の目的に焦点を絞って研究を行った。1. GATA1 変異を用いた微小残存病変の検出:寛解後の患者末梢血よりゲノム DNAを抽出し、それを鋳型に GATA1 遺伝子 の一部を増幅する。増幅産物のうち第二エクソン部分を、次世代シーケンサーを用いて100,000以上のカバレッジで検索し 0.02%の感度で変異の検出する方法を開発した。2. コヒーシンなどのDS-AMKL関連遺伝子変異の検出: AMKLを発症する症例では、既にTAM診断時検体にGATA1以外のDS-AMKL特異的遺伝子変異を有するマイナークローンが存在する可能性がある。本年度は、TAM寛解後にDS-AMKLを発症した10症例のAMKL細胞を用いて、DS-AMKL 関連遺伝子のターゲットシーケンスを行った。また、TAMからDS-AMKLに進展した1症例の全ゲノムシーケンスを行い、CTCFの欠失部位の塩基配列を確定した。その情報をもとに、TAM発症時の微少残存腫瘍の存在をDroplet Digital PCR法で解析した。その結果、TAMでは、CTCF欠損を有するDS-AMKLクローンは検出感度以下であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、DS-AMKLに進展するTAMの患者を正確に同定する画期的な方法を開発し、白血病予防法を開発するための基礎を築くことである。本年度は、以下の研究成果が得られ、概ね順調に研究が進展している。GATA1 変異を用いた微少残存病変(GATA1-MRD)検出法を開発した。TAMでみられるGATA1変異は、多様性に富み、芽球の割合も非常に幅があることから、変異特異的 PCRなどでは検出や定量が困難である。そこで、次世代シーケンサーを用いた、アンプリコンシーケンスによって、変異の同定を試みた。7.2kbと1.5kbの増幅産物をNexteraシステム(トランスポゾン)で300 bpほどの長さにランダムに断片化し、次世代シーケンサーで解析した。診断時の変異検索の際には、coverageを20,000として、0.3%の頻度の変異を検出可能であった。次に MRDの検出に用いることができるか、さらに感度を上げて検索をした。Coverageを100,000とすると既知の変異であれば0.02%の感度で変異を検出することが可能となった。AMKLを発症する症例では、既に、TAM診断時検体にGATA1変異以外のDS-AMKL特異的遺伝子変異を有するマイナークローンが存在する可能性がある。本年度は、TAM寛解後にDS-AMKLを発症した10症例のAMKL細胞を用いて、DS-AMKL 関連遺伝子のターゲットシーケンスを行った。また、TAMからDS-AMKLに進展した1症例の全ゲノムシーケンスを行い、CTCFの欠失部位の塩基配列を確定した。その情報をもとに、TAM期のMRDをDroplet Digital PCR法で解析した。その結果、TAMでは、CTCF欠損を有するDS-AMKLクローンは極めて少なく検出感度以下であった。
本研究の目的は、DS-AMKLに進展するTAMの患者を正確に同定する画期的な方法を開発し、白血病予防法を開発するための基礎を築くことである。平成27年度は、GATA1 変異を用いた微少残存病変(GATA1-MRD)検出法を開発した。Nexteraシステムを用いて 卓上型次世代シークエンサーMiSeqで解析し、0.02%の感度で変異を検出することが可能となった。本年度は、さらに高感度なエラーコレクテイド・シークエンス法を用いて、10-4~10-5の感度でMRDを検出できる方法を開発することを目指す。この方法を用いて、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)のTAMの前方視的観察研究 (TAM-10)の検体を用いて、GATA1-MRDを解析する。TAM-10では、既に160名以上のTAM症例を蓄積し、診断後1ヶ月と3ヶ月の末梢血も保存されている。これらの症例の中から、約20%(約30例)がDS-AMKLを今後2年以内に発症すると推定される。昨年度は、TAM寛解後にDS-AMKLを発症した10症例のAMKL細胞を用いて、DS-AMKL 関連遺伝子のターゲットシーケンスを行った。本年度は、さらにエクソームシークエンスを行い、GATA1変異以外のDS-AMKL特異的遺伝子変異を同定する。その情報をもとに、TAMの時期にDS-AMKLマイナークローンが存在するかどうかをDroplet Digital PCR法やエラーコレクテイド・シークエンス法で解析する。以上の解析から、GATA1-MRDやDS-AMKL 関連遺伝子の変異検出がDS-AMKLに進展するTAM症例を同定するのに有用かどうかを検証する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Pediatr Blood Cancer
巻: 63 ページ: 248-54
10.1002/pbc.25789
巻: 62 ページ: 2021-4.
10.1002/pbc.25624