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2015 年度 実施状況報告書

ダウン症のTAMにおける白血病発症高リスク群の画期的同定法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K15384
研究機関弘前大学

研究代表者

伊藤 悦朗  弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20168339)

研究分担者 土岐 力  弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50195731)
照井 君典  弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00333740)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード小児白血病 / GATA1 / MRD / TAM / ダウン症 / 急性巨核芽球性白血病
研究実績の概要

ダウン症は白血病のリスクが高く、5~10%の新生児はTAMと呼ばれる前白血病を発症し、その20%は生後4歳までに真の白血病(DS-AMKL)へ進展する。最近我々は、GATA1変異を持つTAM細胞にコヒーシン複合体/CTCF、EZH2などをコードする遺伝子群に高頻度に変異が生じていることを発見した。
前白血病の段階であるTAMクローンを根絶することができれば、DS-AMKLの発症を予防できると考えられる。本研究の目的は、DS-AMKLに進展するTAM患者を正確に同定する画期的な方法を開発し、白血病予防法を開発するための基礎を築くことである。本年度は、以下の2点の目的に焦点を絞って研究を行った。
1. GATA1 変異を用いた微小残存病変の検出:寛解後の患者末梢血よりゲノム DNAを抽出し、それを鋳型に GATA1 遺伝子 の一部を増幅する。増幅産物のうち第二エクソン部分を、次世代シーケンサーを用いて100,000以上のカバレッジで検索し 0.02%の感度で変異の検出する方法を開発した。
2. コヒーシンなどのDS-AMKL関連遺伝子変異の検出: AMKLを発症する症例では、既にTAM診断時検体にGATA1以外のDS-AMKL特異的遺伝子変異を有するマイナークローンが存在する可能性がある。本年度は、TAM寛解後にDS-AMKLを発症した10症例のAMKL細胞を用いて、DS-AMKL 関連遺伝子のターゲットシーケンスを行った。また、TAMからDS-AMKLに進展した1症例の全ゲノムシーケンスを行い、CTCFの欠失部位の塩基配列を確定した。その情報をもとに、TAM発症時の微少残存腫瘍の存在をDroplet Digital PCR法で解析した。その結果、TAMでは、CTCF欠損を有するDS-AMKLクローンは検出感度以下であることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、DS-AMKLに進展するTAMの患者を正確に同定する画期的な方法を開発し、白血病予防法を開発するための基礎を築くことである。
本年度は、以下の研究成果が得られ、概ね順調に研究が進展している。
GATA1 変異を用いた微少残存病変(GATA1-MRD)検出法を開発した。TAMでみられるGATA1変異は、多様性に富み、芽球の割合も非常に幅があることから、変異特異的 PCRなどでは検出や定量が困難である。そこで、次世代シーケンサーを用いた、アンプリコンシーケンスによって、変異の同定を試みた。7.2kbと1.5kbの増幅産物をNexteraシステム(トランスポゾン)で300 bpほどの長さにランダムに断片化し、次世代シーケンサーで解析した。診断時の変異検索の際には、coverageを20,000として、0.3%の頻度の変異を検出可能であった。次に MRDの検出に用いることができるか、さらに感度を上げて検索をした。Coverageを100,000とすると既知の変異であれば0.02%の感度で変異を検出することが可能となった。
AMKLを発症する症例では、既に、TAM診断時検体にGATA1変異以外のDS-AMKL特異的遺伝子変異を有するマイナークローンが存在する可能性がある。本年度は、TAM寛解後にDS-AMKLを発症した10症例のAMKL細胞を用いて、DS-AMKL 関連遺伝子のターゲットシーケンスを行った。また、TAMからDS-AMKLに進展した1症例の全ゲノムシーケンスを行い、CTCFの欠失部位の塩基配列を確定した。その情報をもとに、TAM期のMRDをDroplet Digital PCR法で解析した。その結果、TAMでは、CTCF欠損を有するDS-AMKLクローンは極めて少なく検出感度以下であった。

今後の研究の推進方策

本研究の目的は、DS-AMKLに進展するTAMの患者を正確に同定する画期的な方法を開発し、白血病予防法を開発するための基礎を築くことである。
平成27年度は、GATA1 変異を用いた微少残存病変(GATA1-MRD)検出法を開発した。Nexteraシステムを用いて 卓上型次世代シークエンサーMiSeqで解析し、0.02%の感度で変異を検出することが可能となった。本年度は、さらに高感度なエラーコレクテイド・シークエンス法を用いて、10-4~10-5の感度でMRDを検出できる方法を開発することを目指す。この方法を用いて、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)のTAMの前方視的観察研究 (TAM-10)の検体を用いて、GATA1-MRDを解析する。TAM-10では、既に160名以上のTAM症例を蓄積し、診断後1ヶ月と3ヶ月の末梢血も保存されている。これらの症例の中から、約20%(約30例)がDS-AMKLを今後2年以内に発症すると推定される。
昨年度は、TAM寛解後にDS-AMKLを発症した10症例のAMKL細胞を用いて、DS-AMKL 関連遺伝子のターゲットシーケンスを行った。本年度は、さらにエクソームシークエンスを行い、GATA1変異以外のDS-AMKL特異的遺伝子変異を同定する。その情報をもとに、TAMの時期にDS-AMKLマイナークローンが存在するかどうかをDroplet Digital PCR法やエラーコレクテイド・シークエンス法で解析する。
以上の解析から、GATA1-MRDやDS-AMKL 関連遺伝子の変異検出がDS-AMKLに進展するTAM症例を同定するのに有用かどうかを検証する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Preserved High Probability of Overall Survival with Significant Reduction of Chemotherapy for Myeloid Leukemia in Down Syndrome: A Nationwide Prospective Study in Japan.2016

    • 著者名/発表者名
      Taga T, Watanabe T, Tomizawa D, Kudo K, Kiminori Terui K, Moritake H, Kinoshita A, Iwamoto S, Nakayama H, Takahashi H, Shimada A MD, Taki T, Toki T, Ito E, Goto H, Koh K, Saito AM, Horibe K, Nakahata T, Tawa A, Adachi S.
    • 雑誌名

      Pediatr Blood Cancer

      巻: 63 ページ: 248-54

    • DOI

      10.1002/pbc.25789

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transient myeloproliferative disorder with partial trisomy 21.2015

    • 著者名/発表者名
      Takahashi T, Inoue A, Yoshimoto J, Kanamitsu K, Taki T, Imada M, Yamada M, Ninomiya S, Toki T, Terui K, Ito E, Shimada A
    • 雑誌名

      Pediatr Blood Cancer

      巻: 62 ページ: 2021-4.

    • DOI

      10.1002/pbc.25624

    • 査読あり
  • [学会発表] DNA methylation state correlates with progression of myeloid leukemia in Down syndrome.2015

    • 著者名/発表者名
      Saida S, Nakamura M, Toki T, Arai Y, Terui K, Yoshida Y, Ogawa S, Nakahata T, Heike T, Watanabe K, Watanabe A, Ito E.
    • 学会等名
      第57回アメリカ血液学会
    • 発表場所
      オーランド(米国)
    • 年月日
      2015-12-05 – 2015-12-08
    • 国際学会
  • [学会発表] Prospective study of 168 infants with transient abnormal myelopoiesis with Down syndrome: Japan Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group, TAM-10 study2015

    • 著者名/発表者名
      Muramatsu H, Watanabe T, Hasegawa D, Park M, Iwamoto S, Taga T, Ito E, Toki T, Terui K, Yanagisawa R, Koh K, Saito A, Horibe K, Hayashi Y, Adachi S, Mizutani S, Watanabe K.
    • 学会等名
      第57回アメリカ血液学会
    • 発表場所
      オーランド(米国)
    • 年月日
      2015-12-05 – 2015-12-08
    • 国際学会
  • [学会発表] TAMの最新情報(教育講演)2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤悦朗
    • 学会等名
      第60回日本新生児生育医学会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター「アイーナ」,盛岡地域交流センター「マリオス」,ホテルメトロポリタン盛岡(岩手県盛岡市)
    • 年月日
      2015-11-23 – 2015-11-25
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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