研究実績の概要 |
もやもや病は両側ウイリス動脈輪の閉塞と異常側副血管新生による脳虚血・出血を特徴とする。脳動脈再建術による早期介入で予後が改善する事が示されている。発症リスクの高い個体を見出し早期介入を可能にする、スクリーニング法の開発が望まれる。申請者らは全ゲノム相関研究を行い発症リスクを190倍に高めるRNF213創始者変異c.14576G>Aを同定し(J Hum Genet,2011)。更に、c.14576G>A変異のホモ接合体はヘテロ接合体より発症が早く重篤であることが多数のもやもや病症例の解析から明らかになっている(Neurology, 2012)。申請者らは、病態解明のためRnf213ノックアウト(KO)マウスを作成し、血管刺激時の反応が患者病理所見と類似していることを示した(Brain Res、2014)。作成したKOマウスにおいて細胞間マトリックス・メタロプロテアーゼをコードするMMP9遺伝子の発現を検索すると、内頚動脈の免疫染色性、mRNAの発現は共に亢進していた。以前よりもやもや病患者の血中MMP9濃度の高値を報告している(Surg Neurol, 2009)。以上から、RNF213遺伝子検査とMMP9血中濃度の組み合わせによる発症リスク診断を開発を行なった。この創始者変異を簡便に検出する方法として、申請者らが以前開発したCASSOH法(イムノクロマト・ステックの沈降線の有無で遺伝子変異の有無を検出する方法)を用いて検出法を確立した。血中MMP9濃度の測定は、既にキット化されている酵素抗体法により定量した。もやもや病と対照者の各個人のDNA検体と血漿をそれぞれ、遺伝子検査と血中MMP9濃度を測定した。その結果、MMP9濃度を組合わせても遺伝子検査単独のリスク予測精度を改善する事は出来ず、新たなバイオマーカー導入の必要性が示唆された。
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