研究課題
生命の形を作る仕組みは未解明な点が多い。指の形態形成は長年の研究対象となってきたが、これを司るメカニズムには諸説あり結論が出ていない。指の形態形成では、位置情報やパターニング・シグナルを付与する数々の転写因子が重要な役割を果たす。本研究では、指の形態形成を司るホメオチック遺伝子および新規転写因子による指の形態形成機構を解析した。発生遺伝子データベースEmbrysから自脚領域のホメオチック遺伝子を制御する可能性のある転写因子としてHesr1およびHesr2を同定した。ゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9システムを用い、Hesr1遺伝子座にFlagタグ配列をノックイン (以下KI) した。同マウスにおいて抗Flag抗体を用いてKIマウスの指芽およびKIマウスから樹立された胎児線維芽細胞でFlag-Hesr1遺伝子の発現を調べた結果、同遺伝子が特異的に検出されることが判明した。このことから、本マウス系統により、良い抗体が存在しないためこれまで困難であったHesr1の生化学的解析が可能になると考えられた。またこのアプローチは原則的に全遺伝子に適用可能であり、抗体の質に依存しない分子解析への道が開かれた。また、Hesr1と同様に自脚の形態形成に関わる転写因子として、Irx3を同定した。Irx3遺伝子は、胎生9.5~11.5日の指芽において前後軸に沿って発現する。Irx3の発現は、Shhノックアウトマウスの指芽では後方に拡張し、Gli3ノックアウトマウスの指芽では前方で減弱する。Prrx1プロモータを用い、指芽特異的なIrx3 トランスジェニックマウスを樹立した。その結果、同マウス系統は、指の欠損・橈側偏移および中手骨癒合などの自脚形成異常を呈した (PLOS One, 2017)。これらの結果から、形態形成の重要な因子として、転写因子Hesr1およびIrx3が同定された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
PLOS One
巻: na ページ: na
journal.pone.0175673
Experimental Neurology
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