本研究では国内唯一のペルオキシソーム病診断拠点を有する代表者が、ペルオキシソーム機能異常による発症機序を明らかにするために、細胞、ゼブラフィッシュによる疾患モデル系を確立し、患者試料による解析と併せてペルオキシソーム病の病態解明と治療法の開発を目指した。そのうちのZellweger症候群は全てのペルオキシソーム代謝機能が先天的に欠失した究極のペルオキシソーム病で、中枢神経や肝臓をはじめ全身の臓器に様々な障害を引き起こすが、その病態は不明である。本萌芽研究では疾患モデルを用いて極長鎖脂肪酸やフィタン酸、プラスマローゲンなどのペルオキシソーム代謝異常と病態、発生異常との関連を明らかにし、患者リソースによる検証可能なペルオキシソーム病研究体系を確立することにより、新たな展開が期待された。 最終29年度の研究成果として、ゲノム編集技術により重症型と軽症型の2つのタイプのZellweger症候群モデルフィッシュの作成に成功した。そのうち重症型では、極長鎖脂肪酸を含めたペルオキシソーム代謝機能異常に、成長障害、運動機能の低下から早期に死亡する患者の病態を反映する所見が再現された。さらに発生早期から脂肪肝を認めることも確認された。現在、中枢神経系の病理学的検討と、肝組織を用いたマイクロアレイ解析を進めている。本萌芽研究成果により確立されたモデルフィッシュを用いた病態解析法は、ペルオキシソーム病に留まらず、脂質代謝異常に基づく生活習慣病である非アルコール性脂肪肝の病態解明、治療法開発研究の展開に繋がると予想される。 またペルオキシソーム病患者診断機能の拡大についても、従来の典型例の診断システムから、全エクソーム解析と生化学的検証解析を組み合わせた次世代診断システムを確立した。今後、本萌芽研究成果をもとに、国内ペルオキシソーム病診断研究拠点機能を強化し、その成果を国内外に発信していく。
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