前年度の成果に加え、CpG+STINGアゴニストをアジュバントとして百日ぜき抗原を用いたワクチン効果の検討を行った。抗原として、変異型百日ぜき毒素(PT mutant)および血球凝集素(FHA)をそれぞれ1μgおよび2.5μg/mouseで、アジュバントとしてCpG+STINGアゴニストをそれぞれ1μg/mouseで投与する。コントロール群としてアルミニウム塩(アラム)をアジュバントにしたものを使用した。投与経路は筋肉内投与(i.m.)で評価した。 免疫後の抗体価を測定したところ予想に反してCpG+STINGアゴニストをアジュバントとした場合には百日ぜき抗原特異的抗体価は認められなかった。一方でアルミニウム塩(アラム)をアジュバントとして免疫したマウスでは高い抗体価が認められた。前年度の卵白アルブミン(OVA)を用いた検討ではCpG+STINGアゴニストをアジュバントとすることで強力な抗原特異的抗体価の上昇が認められたことから、百日ぜき抗原とCpG+STINGアゴニストとの相性の問題であることが示唆された。 次に同様の実験を経鼻投与にて検討した。PT mutantとFHAを抗原として経鼻ワクチンを行ったところ、アジュバントなしでも高い抗体価が誘導された。この原因として市販のFHAには多量のエンドトキシンがコンタミしていることが示唆された。そこで、PT mutantのみを抗原とし、CpG+STINGアゴニストとともに経鼻にて投与したところ、血清中および肺胞洗浄液中にPT mutant特異的IgG1の誘導が認められた。しかしながら抗体価のレベルは百日ぜき抗原とアラムをi.m.にて免疫したマウスに比して低かった。OVAを抗原として使用した場合も、経鼻投与で非常に高い抗体価が認められることから、百日ぜき抗原を使用した場合は抗原量やアジュバント量の検討が必要であると考えられた。
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