研究課題/領域番号 |
15K15394
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
吉浜 麻生 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 研究員 (00381103)
|
研究分担者 |
上地 珠代 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 研究員 (10381104)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 化合物スクリーニング / リボソーム / 疾患モデル / ゼブラフィッシュ創薬 / 貧血 |
研究実績の概要 |
本研究では、ゼブラフィッシュのノックダウン胚を用いることによる in vivo 化合物スクリーニング法の確立に挑戦した。そのために、リボソームタンパク質(RP)S19 遺伝子の発現抑制により引き起こされる血球数の低下を指標としたパイロット実験を行った。RPS19 遺伝子はヒトの先天性の赤芽球低形成であるダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)の原因遺伝子として報告されている。DBA は発症機序の解明は進展しておらず、新たな治療法の開発は難しい状況にある。これまでに私達は、モルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)でゼブラフィッシュの RPS19 の発現を抑制することにより、脊椎動物で初めて DBA モデルの開発に成功した。そこで本研究では、血球数を回復させる化合物を選抜する方法について検討し、さらに、薬物代謝の in vivo 実験系の確立に取り組んだ。28年度はスクリーニングの過程では複数の化合物を選抜するために、全ての化合物を40μMの濃度で用い、一次スクリーニングでは胚3個、二次スクリーニングでは胚20個を試験した。三次スクリーニングでは再現性と有効な濃度について検討するために、胚20個を用いて10nMから80μMの濃度を試験した。その結果、(1)約600種類の化合物ではDBAモデルの表現型が悪化する一方で、血球数の回復に有効な化合物は、当初の100分の1程度(400nM)の低濃度で効果が得られる可能性があった。(2)MOによるRPS19ノックダウン胚は表現型に個体差が出る傾向があり、バイアスを吸収するために試験数を増やす必要性があることが問題点としてあがった。そこで、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DBA治療に有効な医薬品の開発に向け、造血回復をみせる化合物の候補を選別できたことから、ゼブラフィッシュを用いたシステマティックな in vivo 化合物スクリーニング法の構築は順調に進展していると言える。一方、より効率的にゼブラフィッシュによる創薬を進めるためには安定した表現型を得る必要があり、そのためのCRISPR-Cas9システムによるゲノム編集に着手した。以上より本課題は「おおむね順調に進展している。」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集では、DBA患者で比較的、高頻度に起きるRPS19遺伝子の変異を最初のターゲットとして進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会参加に関する費用について学内資金の支援を受けたため、当該研究課題の旅費を使用しなかった。また、実験を進めるための試薬・器具類などの消耗品について、実験系のスケールを小規模化したため負担が少額で済んだ。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験を順当に進めるために、試薬と器具などの消耗品および物品の購入が必要となる。旅費は、国内外の学会で成果を発表し意見を広く受けるために用いる。謝金は、研究を効率的に進めるためにゼブラフィッシュの飼育を行う実験補助員を1名雇用する。
|