研究課題/領域番号 |
15K15399
|
研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
永田 浩一 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 神経制御学部, 部長 (50252143)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 自閉性障害 / 知的障害 / 神経細胞 / シナプス / スパイン / イメージング |
研究実績の概要 |
自閉性障害(ASD)や知的障害(ID)の病態にはシナプス構造・機能障害が重要な役割を果たす。しかし、シナプス障害の分子メカニズムやダイナミクスは殆ど判っていない。そこで本研究では、まず最初に、共焦点顕微鏡ライブイメージングを応用して初代培養海馬神経細胞におけるシナプス動態のin vitroライブイメージ解析の実験系の確立とその運用を行った。最初に、正常海馬神経細胞におけるシナプスの構造を、1)スパイン初期形成、2)スパインの経時的形態変化、3)スパイン密度変化、の3要素に分けてライブイメージ解析を行なった。その後、実際にASDやIDの病態に関連する分子として低分子量G蛋白質Racの機能に着目した解析を行なった。その結果、Racの発現抑制がシナプス構造に及ぼす影響を観察し、正常なスパインが形成されにくくなることを観察した。この結果は、スパインの構造障害が機能障害を引き起こし、結果としてIDやASDの病態と関連することを示唆する。 引き続き、電気穿孔法を応用してマウスの海馬神経細胞へ各種ベクターを導入し、培養マウス脳スライスにおけるシナプス動態のin vivo(組織レベル)ライブイメージ実験法の開発を行なった。この実験法は、シナプスの構造・形態変化をin vivoでライブイメージ解析するものである。ライブイメージ開始後、2-4時間はスパイン形態の観察が可能であった。しかし、その後、徐々に細胞の培養状態が病的になり、長時間の観察が出来なかった。酸素濃度や培養条件のさらなる検討が必要と思われた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の理由として、期間内にin vitro(細胞レベル)ライブイメージ解析実験系を確立し、ASD/ID病因・病態関連遺伝子Racの機能異常が、初代培養マウス海馬神経細胞のシナプス動態に与える影響のin vitroライブイメージ解析を遂行できたこと、が挙げられる。一方、当初の計画を越えるような成果は得られなかった。その理由は、培養マウス脳スライスにおけるシナプス動態のin vivo(組織レベル)ライブイメージ実験法の開発はできたものの、その観察時間が限られることから、ASD/ID病因・病態関連遺伝子がシナプス動態・機能異常を引き起こす分子メカニズムを解明する為の十分なデータが取得できなかったことである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、in vivoライブイメージの長期(24-48時間)観察が可能になる様に実験系を改良してゆきたい。そして、in vivo/in vitroライブイメージ・データの包括的な比較・解析、を行いたい。得られた結果を基に、ASD/ID病因・病態関連遺伝子がシナプス動態・機能異常を引き起こす分子メカニズムの一端を解明したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
培養マウス脳スライスにおけるシナプス動態のin vivo(組織レベル)ライブイメージ実験法の開発を行なったが、観察可能な時間が2-4時間と短く、十分なデータが取得できていない。そこで、観察時間を24-48時間まで延長するために、引き続き実験条件を改良する必要が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
in vivoライブイメージの実験条件を改良し、長期間の観察を行なう。そしてえられたin vivoライブイメージ・データをin vitroのデータと比較し解析する。得られた結果を基に、ASD/ID病因・病態関連遺伝子がシナプス動態・機能異常を引き起こす分子メカニズムの一端を解明する。
|