研究課題
21番染色体のトリソミーに起因するダウン症候群の患者では、出生後も白血病、低身長、特徴的肥満など、中胚葉を起源とする組織・細胞に様々な合併症を発症する頻度が高い。しかし、これらの合併症の発症機序と21番染色体上の遺伝子過剰の関係についてはほとんど解明されていないため、その発症予防法も確立されていない。そこで我々は、ダウン症候群患者由来iPS細胞(DS-iPS細胞)および21番染色体を導入されたヒトES細胞から造血・血液細胞や間葉系細胞を分化誘導し、それらを細胞生物学的および分子生物学的に解析することにより、これらの合併症の発症機序の分子基盤を解明することを計画した。結果、DS-iPS細胞および健常人由来iPS細胞を造血・血液細胞に分化誘導した後、血液細胞コロニー法を用いて造血・血液細胞への分化能を比較検討したところ、DS-iPS細胞からの分化誘導系においては健常人由来iPS細胞からのそれと比較して全血球系において造血の亢進が認められた。さらにDS-iPS細胞と健常人由来iPS細胞から造血・血液細胞への分化過程における遺伝子発現解析ではRUNX1を含む21番染色体上の複数の遺伝子発現の亢進が確認され、これを標的とするダウン症候群における造血障害に対する新規治療法の可能性が示唆された。さらに、ダウン症候群および健常人臍帯由来のiPS細胞を樹立し検討を行ったところ、同様の結果が再現されたことから、ダウン症候群患者の造血障害には21番染色体トリソミーによる遺伝子の過剰発現、特にRUNX1の発現亢進が深く関与している可能性が強く示唆された。現在、ダウン症候群患者臍帯より分離・培養した間葉系幹細胞と、同じくダウン症候群由来臍帯より樹立したDS-iPS細胞との共培養法による血液分化誘導を行い、ダウン症患者の生態環境に近い条件下での解析を計画中である。
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