研究実績の概要 |
我々が同定した母胎児間シグナルリレー(母体LIF-胎盤ACTH-胎児LIF)による胎児の発生調節機構は、DOHaD仮説を検証するうえで重要なモデルである。このモデルにおいて母胎間シグナルの伝達を効率よく行うための組織構築が胎盤に存在することが予想される。 本研究課題では、胎盤絨毛間腔(母体側)と絨毛血管(胎児側)をダイレクトに架橋する情報伝達装置の存在を証明する。平成29年度には、以下の内容について検討を行った。(1)我々が独自に開発してきた組織を短時間で透明化するプロトコル(RAP法)が確立し、論文公表に至った(Sci Rep, 2018, in press)。(2)胎盤絨毛間腔と毛細血管を架橋する突起を脂溶性カルボニアン色素DiIを用いて蛍光標識した後に、RAP法を用いて胎盤全体を透明化し、架橋構造の全容のホールマウント解析を行うことが可能か検討した。その結果、RAP法に含まれる界面活性剤によりDiIが溶出してしまうため、現行のRAP法をDiI標識法に適用することができなかった。現在、この問題をクリアするために新たな透明化試薬の開発を行っている。(3)RAP法と免疫染色の組み合わせについて検討を行ったところ、ニューロフィラメントなどの細胞骨格タンパクについては、常法よりもRAP処理した標本のほうがS/N比が高くなることが分かった。前年度に見出した、胎盤内のGFAP陽性線維について、ホールマウント蛍光免疫染色とRAP法を組み合わせた胎盤のホールマウント・イメージング法の確立を目指して、条件設定を最適化する段階まで到達した。(4)胎盤組織中にGFAP陽性線維が見出されたことから、神経堤細胞が胎盤に侵入している可能性が高いと考えられた。そこで、神経堤細胞の蛍光免疫染色を行ったところ、多数の陽性細胞が検出された。これらの神経堤細胞の胎盤内における分布について解析を行っている。
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