研究課題
心血管系の発生・分化・形態形成の分子メカニズムの研究は、先天性心血管奇形・遺伝性血管病を含む、様々なヒト疾患の病因解明に必須の研究テーマである。本研究はBone morphogenetic protein(BMP)をリガンドとするALK1受容体シグナル伝達系による発生・形態形成制御機構を、私たち自身が報告した新規下流分子TMEM100に焦点を当てて解析するものである。TMEM100は胎生期の血管内皮細胞に特異的に発現する遺伝子であり、そのノックアウトマウスは重篤な血管形態形成異常によって致死となる。培養ヒト内皮細胞において、TMEM100遺伝子発現はBMP9/BMP10刺激-ALK1受容体活性化により著明な亢進を示すが、今回の研究により、そのメカニズムにはSMAD転写因子の活性化に引き続いて生ずる、何らかのタンパク質分子の追加産生が必要であることが明らかになった。Bacterial artificial chromosome(BAC)を用いたトランスジェニックマウスレポーター解析を通じて、遠位に存在するエンハンサーがマウス胎仔における血管内皮特異的発現に重要であることが判明し、エンハンサー領域の絞り込みを行った。今後、新しいエンハンサー領域を介したTMEM100遺伝子の転写制御機構を明らかにするため、分子生物学的手法を用いた解析を続ける計画である。一方、近年TMEM100はTRPチャネルなどとの相互作用により細胞内カルシウムイオン制御系に影響を与えることが示されたため、マウス胎仔の血管内皮細胞に発現するTRPチャネルの同定を行った。現在、これらTRPチャネルの機能、もしくはカルシウムシグナルの制御機構に対するTMEM100の意義について研究を進めている。
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http://www.ncvc.go.jp/res/divisions/molecular_physiology/index.html