研究実績の概要 |
水疱性類天疱瘡は高齢者に好発する自己免疫性水疱症であり、表皮真皮境界部に存在する17型コラーゲン(COL17)に対する自己抗体によって発症する疾患である。水疱性類天疱瘡では副腎皮質ステロイドの全身投与を要することが多く、重症化すると死に至ることがある。従って副作用の少ない疾患特異的治療法開発が必須だが、未だ根本的治療法は確立していない。本研究の目的は、“経口免疫寛容”を応用し、COL17に対する自己免疫反応を人為的に制御することであり、水疱性類天疱瘡患者自己抗体の多くはCOL17のNC16A領域(77アミノ酸)を標的とする点に着目した。NC16A領域ペプチドを事前に経口投与し、リコンビナントCOL17をCOL17ヒト化マウス(Nishie W, et al. Nat Med 2007)へ免疫した。免疫時には、アジュバントとしてTiterMaxを用いる群とアジュバントを使用しない群を設けた。結果、TiterMaxを用い免疫したマウスでは、NC16Aペプチド投与群で抗NC16A IgGクラス自己抗体の産生が抑制された。一方、アジュバンドを使用せずリコンビナントCOL17を投与したマウスでは、NC16Aペプチド投与によって抗NC16A IgGクラス自己抗体の産生が抑制される傾向を認めた。従ってNC16Aペプチドの経口投与は、水疱性類天疱瘡に対し副作用が少なく有用な発症予防あるいは治療法となり得る可能性を示唆すると考える。今後、使用するNC16Aペプチドの投与量や回数の最適化など研究を継続する予定である。
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