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2016 年度 実施状況報告書

ナノスーツ法を用いた癌研究:電子顕微鏡で生きたまま細胞を観察する新しい技術

研究課題

研究課題/領域番号 15K15413
研究機関浜松医科大学

研究代表者

平川 聡史  浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50419511)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード癌 / 細胞・組織 / 電子顕微鏡
研究実績の概要

本研究の目的は、ヒト悪性黒色腫細胞株を用いて、その浸潤過程を生きたまま走査型電子顕微鏡で観察することである。細胞を生きたまま電子顕微鏡で観察する方法として、ナノスーツ法がある。この方法に基づき、本研究では細胞骨格の変化や糸状仮足の形成を経時的に測定する。本研究では、悪性黒色腫細胞株A375を用いて検討を行う。
A375二は、転移株と非転移株がある。そこで、癌間質モデルを立体的に構築し、A375を播種することにより、転移株と非転移株の浸潤過程を比較する。3次元培養間質モデルは、ヒト皮膚由来線維芽細胞を用いて作成した。この細胞表面にA375を播種し、ナノスーツ法を用いて走査型電子顕微鏡で観察した。次に、この細胞が生きているかどうかを評価するためにアッセイを行った。
さらに、細胞の浸潤能を抑制する薬剤の候補を探索すべく、準備実験に取り組んだ。具体的には、細胞骨格や糸状仮足の形成に関わる因子を検討し、そのシグナルを抑制する可能性がある化合物を候補として挙げ、培養液に添加することにより作用を検討した。この結果、細胞の形態を反映するパラメータに基づいて薬剤の効果を観測することが可能であることを見出した。ただし、添加する薬剤の濃度や時間、あるいは再現性について、今後さらに対照群とともに評価する必要がある。
本研究は、癌治療を見据えた研究基盤を創出し得るものであり、その成果は、悪性黒色腫細胞のみならず、株化された癌細胞に普遍的に見られる生物像を明らかにする可能性があるとともに、将来広く社会と医療福祉に貢献するものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞骨格及び糸状仮足の観測は、ナノスーツ法に基づいて走査型電子顕微鏡を用いることにより、再現性を取りながら観察することが出来るようになった。さらに、細胞骨格及び糸状仮足の計測は、それぞれのパラメータを同定し、観測系を構築することにより、一定の測定値を得られるようになった。ただし、パラメータに基づいた計測値は定量的に評価する必要があり、適切なソフトウェアを活用して評価する必要があると思われる。従って、本研究の進捗状況はおおむね順調と判断しているが、今後さらに詳細に検討すべき点もある。

今後の研究の推進方策

各種パラメータの定量的評価方法を確立した後、細胞の浸潤能を抑制する薬剤に関するスクリーニングを行い、細胞機能に関わるシグナル伝達経路を見出すことを目指す。具体的には、細胞の骨格形成に関わる蛋白質とその構成に関わる因子を候補に据えて、薬剤ライブラリのスクリーニングを行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

ナノスーツ法は研究開発段階にあり、より至適化された研究試薬が開発されたから。今後パラメータに基づいて観測する際には、試薬が不均一などの理由で生じ得るバイアスを軽減することを目指して、研究を行う予定である。さらに、細胞機能を抑制する薬剤をライブラリから探索する必要があり、ライブラリを準備する経費が必要があるから。

次年度使用額の使用計画

細胞表面のナノスーツ化を円滑に促し、より安定した再現性を生み出す試薬を用いて、本研究を行う。その上で、パラメータの測定や薬剤のスクリーニングを行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] A modified 'NanoSuit;' preserves wet samples in high vacuum: direct observations on cells and tissues in field-emission scanning electron microscopy2017

    • 著者名/発表者名
      Takaku Y et al.
    • 雑誌名

      R Soc Open Sci

      巻: 4 ページ: 160887

    • DOI

      10.1098/rsos.160887

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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