研究課題
ナノスーツ法は、組織を固定せず、生きたまま走査型電子顕微鏡で観察する新しい技術である。本研究課題の目的は、1.ヒト皮膚由来培養細胞をナノスーツ法で観察出来るかどうかを検討し、2.悪性黒色腫細胞を3次元癌間質モデルに応用し、ナノスーツ法で癌細胞の浸潤能を測定し、3.癌細胞に対する分子標的薬の効果を、ナノスーツ法に立脚して定量的に評価することである。従来、電子顕微鏡の観察試料は化学固定し、金属を蒸着していた。このため、皮膚や細胞が持つ瑞々しさを観察することは出来なかった。しかし、ナノスーツ法は、界面活性剤などで組織表面に皮膜を形成するため、表面構造を保ちつつ、組織や細胞を生きたまま観察出来る可能性がある。そこで、本研究はナノスーツ法を皮膚の観察と癌研究に応用し、その有用性を検討した。本研究では、ヒト悪性黒色腫細胞株A375の浸潤過程を、生きたまま走査型電子顕微鏡で観察した。実際には、ナノスーツ法を用いて、細胞骨格の変化や糸状仮足の形成を経時的に測定した。A375には、転移株と非転移株の二種類がある。そこで、癌間質モデルを立体的に構築し、A375を播種することにより転移株と非転移株の浸潤過程を比較した。また、3次元培養によりリンパ管内皮細胞を内包する組織を構築し、A375転移株のリンパ管への浸潤を評価した。次に、A375転移株に対する治療モデルを作成し、間質浸潤を抑制すべく、分子標的薬でA375転移株を処理し、ナノスーツ法により形態変化を定量的に測定した。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
R Soc Open Sci.
巻: 4 ページ: 160887
10.1098/rsos.160887