研究実績の概要 |
皮膚はヒトにおいて最も強靭な概日時計機能をもつ臓器の1つである。また皮膚は、性ステロイドの産生器官でもあり、特に、閉経後の女性にとって皮膚で産生されるステロイドは重要な性ステロイドの供給源となる。このような中、我々は、時計遺伝子によって制御される新規のステロイド合成律速酵素3β-HSDを見出し、それが副腎皮質のアルドステロン産生細胞と皮膚の性ステロイド産生器官である皮脂腺に特異的に発現することをヒトおよびマウスにおいて見出した(Nat Med, 2010; Mol Cell Endocrinol, 2014; J Clin Endocrinol Metab, 2014; Mol Cell Endocrinol, 2015)。またさらに本酵素の発現調節機構を詳しく調べ直した結果、本酵素は時計遺伝子によって制御されるだけでなく、核内オーファン受容体NGFIBを介して刺激選択的な制御を受けることも明らかにした(Mol Cell Biol, 2014; Endocr J, 2015)。重要なことに、ヒトの皮膚皮脂腺細胞にもこのNGFIBが時計遺伝子とともに発現することを我々は示した(J Invest Dermatol, 2009; J Steroid Biochem Mol Biol, 2014)。皮膚に内在する概日時計は、周期的な環境変化(紫外線や乾燥の変動)にさらされる皮膚が外部環境に適応するための必須の機構と考えられる。我々が見出した3β-HSDの発現制御をさらに見極めることによって皮膚の重要な環境適応機構の一端が明らかになる可能性がある。
|