研究課題
皮膚において、尋常性乾癬が肥満の人で多く、また肥満の程度と臨床症状が相関することが知られる。従来、肥満による脂肪組織の肥大・活性化が炎症を誘導すると考えられてきたが、皮下脂肪組織と乾癬病変の主座である表皮から真皮上層との時空間的な離存は、その説明を困難なものとさせる。申請者は、二光子励起顕微鏡の導入により、皮膚血管周囲に皮下脂肪とは異なる脂肪細胞の存在を新規に同定し、perivascular adipose tissue (PAT)と命名した。PATは真皮内に存在するため、肥満における尋常性乾癬の病態形成に関与する可能性がある。高脂肪食負荷マウス(コントロールは通常食負荷マウス)に尋常性乾癬様皮膚炎を発症させたところ皮疹が著明に増悪した。さらに、炎症部位におけるT細胞サブセットなどの免疫細胞の質的および量的差異をフローサイトメトリーにより比較、検証したところ、IL-17産生のgdT細胞の浸潤が著明に亢進していた。次に、皮下脂肪を除去した皮膚をコラゲナーゼ処理し、遠心分離後をすることによりPATを回収し、通常食マウスと高脂肪食マウスの皮下脂肪とPATの遺伝子発現プロファイルを解析したところ、TNF-alphaやgdT細胞を遊走させるケモカインが上昇していた。さらに、PATに高脂肪食の成分であるリノレン酸などを添加したところ、同様のサイトカインやケモカインの産生が亢進した。また、血管内皮細胞においてもリノレン酸負荷により、CCL20などのケモカインの発現が亢進した。以上の結果は、高脂肪食負荷により、皮膚のPATや血管内皮細胞を介して尋常性乾癬の症状が増悪に導かれていることを示唆する。肥満の人に尋常性乾癬の皮疹が増悪することが知られていたが、それを理解する一つの糸口が見つかった。
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Cell Death Differ
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