研究課題
細胞内のミスフォールド蛋白質は通常細胞内で速やかに分解される。ところが申請者は細胞内のミスフォールド蛋白質がHLAクラスII分子の抗原提示部位に会合すると分解されずに細胞外へ輸送されることを発見した。さらに、HLAクラスII分子と複合体を形成したミスフォールド蛋白質が、関節リウマチ等の多くの自己免疫疾患における自己抗体の標的分子となることを明らかにした。特に、HLAクラスII分子に提示されたIgG重鎖に対するリウマチ患者血清の反応性はHLAクラスIIアリルによる関節リウマチの感受性と非常に高い相関を示した。一方、抗リン脂質抗体症候群患者においても疾患感受性HLAクラスII/β2GPI複合体に対する自己抗体が患者血清中に認められた。さらにこのβ2GPI/HLAクラスII複合体に対する自己抗体は通常検査のβ2GPI抗体より高感度に抗リン脂質抗体症候群患者を検出し、抗リン脂質抗体症候群の原因抗体と考えられた。ところで難治性皮膚疾患の一つに難治性皮膚潰瘍がある。難治性皮膚潰瘍には種々の基礎疾患が認められるが、原因不明の場合も多い。そこでこれらの難治性皮膚潰瘍患者の血清を用いてβ2GPI/HLAクラスII複合体抗体を評価したところ、約3割程度の患者で陽性となることが判明した。以上より抗β2GPI/HLAクラスII複合体抗体陽性難治性皮膚潰瘍患者において抗リン脂質抗体症候群の背景が推測された。さらにβ2GPI/HLAクラスII複合体抗体陽性の慢性皮膚潰瘍患者の皮膚真皮毛細血管領域にβ2GPI/HLAクラスII複合体を検出した。以上より一部の難治性皮膚潰瘍患者でβ2GPI/HLAクラスII複合体やβ2GPI/HLAクラスII複合体抗体が発症に関与する可能性を明らかにした。これらの事よりミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体が皮膚疾患に関与する可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
難治性皮膚潰瘍患者の血清を用いてβ2GPI/HLAクラスII複合体抗体を評価し、約3割程度の患者で陽性となることを見出した。このことから抗β2GPI/HLAクラスII複合体抗体陽性難治性皮膚潰瘍患者で抗リン脂質抗体症候群の背景を明らかにした。さらにβ2GPI/HLAクラスII複合体抗体陽性の慢性皮膚潰瘍患者の皮膚組織の真皮毛細血管領域にβ2GPI/HLAクラスII複合体を検出した。以上よりβ2GPI/HLAクラスII複合体やβ2GPI/HLAクラスII複合体抗体が一部の難治性皮膚潰瘍患者の潰瘍発症機構に関与する可能性を明らかにした。以上よりミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体が皮膚疾患に関与する可能性を示した。現在症例数を増やして他の皮膚疾患におけるミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体の解析を進めている。
今回難治性皮膚潰瘍患者においてミスフォールド蛋白/HLAクラスII複合体の重要性を明らかにしたが、さらに種々の皮膚疾患において解析を進めている。HLAの違いによりミスフォールド蛋白提示能が異なるため症例数の増加が必要となったが、現在解析予定の皮膚疾患患者で数を増やし解析を進めている。
難治性皮膚潰瘍患者の血清を用いてβ2GPI/HLAクラスII複合体抗体を評価し、約3割程度の患者で陽性となることを見出した。このことから抗β2GPI/HLAクラスII複合体抗体陽性難治性皮膚潰瘍患者が抗リン脂質抗体症候群の背景を有することを明らかとした。β2GPI/HLAクラスII複合体抗体が一部の難治性皮膚潰瘍患者の潰瘍発症機構に関与する可能性があることから、他の皮膚疾患でのミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体の発症機構への関与の解析を進めている。ところがHLAの違いによりミスフォールド蛋白提示能が異なるため症例数の増加が必要となった。現在解析予定の皮膚疾患患者で症例数を増やしミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体の解析を進めている。
現在症例数を増やして特定のHLAを有する患者の数を増やし、種々の皮膚疾患におけるミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体の解析を進めている。解析予定の皮膚疾患でミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体に対する自己抗体の解析及び、皮膚組織中でのミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体の検出を行う。種々のHLAによるミスフォールド蛋白質提示能の違いと皮膚疾患発症との関連を解析する。
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