表皮水疱症なとで見られる revertant mosaicism では、変異のなくなった細胞の存在が確認さ れている。その発生のメカニズムは不明であるが、我々は皮膚幹細胞における相同組換えによる revertant 細胞の生成の可能性を考える。 その生成の際に同時に生じる、両アリルに変異を持っている細胞によって新規の病因因子を特定すると共に、revertant 細胞を治療に用いる新規システムの確立の意義は大きいと考える。 その第一歩として、我々はヒト iPS 細胞でCRISPR/Cas9による切断で、染色体の狙った領域で染色体相同組換えを起こし、部分的にLOHを起こさせる系を研究期間中に確立することができた。具体的には、ブルーム遺伝子の発現を制御できるようにしたiPS細胞を樹立。その細胞株において、19番染色体のAAVS1領域にG418/puromycin double selection 選択カセットを導入し、相同組換えを起こした細胞のみを選択できるようにした。その細胞株において、ブルーム遺伝子の発現制御下において、CRISPR/Cas9により染色体を切断したところ切断点の近傍で相同組換えが生じて、そこからテロメアまでの領域においてLOHが起きているiPS細胞株が得られたことをSNPを検定することにより確認した。さらに計画通り、19番染色体で用いた選択カセットを導入したトランスポゾンベクターを作製、他の染色体でもG418/puromycin double selectionが機能することを確認した。今後、皮膚疾患に関連するiPS細胞株を得て、新規の病因因子を特定すると共に、revertant 細胞を治療に用いるシステムの樹立を達成したい。
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