研究課題
本研究の目的は、フィーダーフリーの条件で維持したヒトiPS細胞を用いてヒト毛包における上皮ー間葉系相互作用を模倣する実験系を確立し、それによる薬剤スクリーニングの可能性を模索することである。前年度の研究でヒトiPS細胞ラインからレチノイン酸、組換えBMPタンパクを添加したケラチノサイト培地によりケラチン14を発現するケラチノサイト分画を誘導したが、角化傾向強く生存率が不良であった。本年度は分化誘導する細胞数を大幅に増やし、コラーゲンコートディッシュへの継代の時期を遅らせるなどの工夫により、実験に十分な収量のケラチノサイトを安定して得る技術をほぼ確立した。また、前年度多分化能を確認したヒトiPS細胞由来間葉系細胞についても収量を確保することが可能になり、WNT、BMP、FGFシグナル活性化因子を用いて毛乳頭細胞様の細胞を得ることができた。これらにより本年度は、ヒトiPS細胞由来の毛包ケラチノサイト相当細胞、毛乳頭相当細胞からなる共培養系を比較的安定して作成することが可能になった。正常ヒトケラチノサイト、毛乳頭細胞からなる共培養をコントロールとしてヒトiPS由来細胞からなる共培養系における毛包上皮、毛乳頭のマーカー遺伝子の発現をみたところ、ヒトiPS由来細胞細胞からなる共培養系はコントロールと比較してKRT75、TRPS1、KRT17、MSX2などの毛包上皮関連遺伝子、ALPL、LEF1、RGS2、IGF1などの毛乳頭関連遺伝子を強く発現しており、少なくとも毛包における上皮-間葉系相互作用を模倣している可能性を示すことができた。まだミノキシジルを共培養系に作用させても十分な毛包関連遺伝子の発現上昇はみられないものの、今後さらなる改良により目的とする薬剤スクリーニング系を確立するための技術的基盤を築くことができた。
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Scientific Reports
巻: 21 ページ: 42777
10.1038/srep42777
http://www.kyorin-u.ac.jp/univ/graduate/medicine/education/departments/dermatology/