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2015 年度 実施状況報告書

皮膚タイトジャンクションバリア破綻が誘発する痒みと皮膚炎発症の分子メカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K15422
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

久保 亮治  慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70335256)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードアトピー性皮膚炎 / タイトジャンクション / 角質 / クローディン1 / ランゲルハンス細胞 / 皮膚炎
研究実績の概要

アトピー性皮膚炎(AD)患者におけるフィラグリン変異の発見を皮切りとして、角質バリア障害がADを始めとする様々なアレルギー疾患の発症要因となることが示されつつある。一方、表皮には角質バリアの内側にTJバリアが存在する。AD患者皮膚において、角質バリア障害と共にTJバリアの破綻が観察されている。しかし、TJバリア破綻がADの病態形成にどのように寄与しているかは、未だに明らかではない。我々は、成体マウス皮膚のCldn1をタモキシフェン誘導性にノックアウトすることによりTJバリアを破綻させるモデルマウス(Cldn1flox/flox・K14-creERTマウス)を開発した。本マウスの解析より、タモキシフェン投与5日後には表皮TJバリアが完全に破綻すること、しかしその時点ではまだ角質バリアは正常なこと、TJバリア破綻により二次的に角質への分化異常が起こり、角質がTJ破綻後に作られたものと置換される約1週間の間に角質バリア障害が明らかになることが明らかとなった。さらに、タモキシフェン投与後18日目には明らかな皮膚炎症状を生じた。一方、タモキシフェン投与から皮膚炎が生じるまでの過程における痒み刺激について、SCLABAを用いた総掻爬時間測定によって解析したところ、驚くべきことにタモキシフェン投与5日目にはTJバリア破綻とほぼ同時に、角質バリアが正常な状態で痒み刺激が始まることが明らかになった。同時期にはほぼ表皮全面的なランゲルハンス細胞(LC)の活性化が観察された。本モデルマウスにLangerin-DTAを導入することにより、ランゲルハンス細胞を消失させても、Cldn1コンディショナルノックアウトにより生じる痒み刺激と皮膚炎症状に変化は見られなかったことから、本モデルマウスにおける痒みと皮膚炎はランゲルハンス細胞非依存的に生じることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Cldn1flox/flox・K14-creERTマウスにおいて、タモキシフェン投与後、Cldn1が表皮特異的にノックアウトされ、その後角質バリアが破綻するまでの詳細な時間経過依存的な表現型解析を行った。単離した角質を用いて、その水透過性を測定することにより、TJバリア機能と角層バリア機能を分離して機能評価することが可能となった。その結果、タモキシフェン投与後8日以内に表皮のTJバリアは完全に破綻するが、その時点では角層バリア機能には変化がなかった。その後、タモキシフェン投与後10日目頃から角層バリア機能が徐々に低下し始め、18日目までに最低値に達し、同時に皮膚炎症状が生じた。本皮膚炎の性質を評価するために、各時間経過時点において表皮・真皮よりmRNAを精製し、RNAseq解析を行うことにより、そのサイトカインプロファイルを解析した。
Cldn1flox/flox・K14-creERTマウスとLangerin-DTAマウスの掛け合わせを行い、ランゲルハンス細胞を欠失するマウスにおいてタモキシフェン誘導性にCldn1をノックアウトし、表皮特異的にTJバリアを破綻させることを可能とした。本モデルマウスにおいてCldn1をコンディショナルノックアウトしても、その表現型はランゲルハンス細胞が存在するマウスと同一であった。すなわち、TJ破綻により生じる痒み刺激や皮膚炎は、ランゲルハンス細胞非依存的に起こることが明らかとなった。

今後の研究の推進方策

皮膚には複数種類の感覚神経が分布していることがこれまでに明らかになっている。代表的なものとして、TRPV1+の神経とtyrosine hydroxylase (TH)+の交感神経の関与について解析を行う。それぞれの神経をresiniferatoxin (RTX)または6-hydroxydopamine (6OHDA)投与によりablationする。Cldn1 cKOマウスをRTXまたは6OHDAで前処置しておいてからタモキシフェン投与を行うことで、表皮TJバリア破綻をスタート地点として生じる2種類の痒みが、TRPV1+の神経とTH+の神経のいずれによって伝達されているのかを明らかにする。また、皮膚全層の3次元観察手法を確立し、皮膚炎時における感覚神経の走行変化とTJバリアの相互関係について、本モデルマウスを用いて解析する。
一方、様々な皮膚炎マウスにおいて、皮膚細菌叢の変化が皮膚炎症を引き起こしていることが明らかとなってきている。TJバリア破綻により引き起こされる痒み刺激が、皮膚細菌叢依存性かどうかについて、まずは抗生物質投与により痒み刺激や皮膚炎の重症度が変化するかを解析する。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、ランゲルハンス細胞の欠損マウスモデルの作成と解析に集中し、神経ablationモデルマウスの樹立を次年度に回したため、次年度使用額が生じた

次年度使用額の使用計画

皮膚細菌叢変化が皮膚炎表現型に与える影響についての解析を、RNAseqによる網羅的な遺伝子発現解析を組み合わせつつ進める。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [学会発表] Functional tight junction barriers in sebaceous glands: defects in holocrine secretion in claudin-1 deficient mice2015

    • 著者名/発表者名
      Atsugi T, Yokouchi M, Hirabayashi A, Ohyama M, Amagai M, Kubo A
    • 学会等名
      The 40 th Annual Meeting of the Japanese Society for Investigative Dermatology
    • 発表場所
      岡山コンベンションセンター(岡山県岡山市)
    • 年月日
      2015-12-12
    • 国際学会
  • [学会発表] Epidermis-specific ablation of claudin-1 in adult mice demonstrates a key role of tight junction barrier in the development of atopic dermatitis2015

    • 著者名/発表者名
      Kubo A, Hirano T, Kawasaki H, Yokouchi M, Atsugi T, Amagai M
    • 学会等名
      The 64th Meeting of Japanese Society of Allergology
    • 発表場所
      グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)
    • 年月日
      2015-05-27
    • 国際学会
  • [学会発表] Tight junction barrier dysfunction induced by epidermis-specific claudin-1 ablation is sufficient to cause dermatitis in mice2015

    • 著者名/発表者名
      Kubo A, Hirano T, Yokouchi M, Kawasaki H, Atsugi T, Amagai M
    • 学会等名
      75th Annual Meeting Society for Investigative Dermatology
    • 発表場所
      アトランタ(USA)
    • 年月日
      2015-05-06 – 2015-05-09
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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