研究課題
双極性障害は、統合失調症と並ぶ代表的な精神疾患であるが、その病因は未だ不明である。今回、双極性障害患者および年齢等を合致させた健常者の脳脊髄液のメタボローム解析を実施した結果、双極性障害患者のイソクエン酸濃度が健常者と比較して有意に高い事を発見した。また、双極性障害患者の死後脳を用いた研究から、イソクエン酸の代謝酵素イソクエン酸脱水素酵素(IDH: Isocitrate dehydrogenase)のサブタイプ(IDH3A)の遺伝子発現やタンパク発現が双極性障害患者群で減少していることを見出した。また、ラットに4週間気分安定薬(リチウムやバルプロン酸)を投与し、ラットCSFのメタボロミクス解析を実施しても、イソクエン酸濃度は変化しなかったことから、服薬の影響は低いと推測された。IDH3Aは細胞のミトコンドリア内にあるクエン酸回路に存在することから、今回の発見は、双極性障害の脳では、ミトコンドリア内のクエン酸回路のIDH3Aの減少により、イソクエン酸濃度が高くなっていると推測される。今回の研究成果は、これまで提唱されている双極性障害のミトコンドリア異常仮説を支持する重要な成果である。
1: 当初の計画以上に進展している
今回の研究成果は、精神医学の権威ある雑誌にアクセプトされ、掲載された。
さらに、CSFを用いたメタボロミクス解析を実施したので、データ解析を行い、論文をまとめる。
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Molecular Psychiatry
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10.1038/mp.2015.217