研究課題/領域番号 |
15K15426
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
高橋 太郎 浜松医科大学, 医学部, 助教 (30402358)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Low level kaser therapy / 神経栄養因子 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
近年、炎症を伴う外科的疾患に対する治療法として各種光線療法が多用されている。特に直線偏光赤外線治療器による近赤外線照射は、強い抗炎症作用を持ち、非侵襲的でかつ安全な治療法として多くの施設で行われ、有効性が報告されている。最近では動物頭部外傷モデルにおける活性化ミクログリアの減少が報告され、我々は近赤外線の持つ作用に注目し、精神疾患における活性ミクログリア仮説に対する有益な治療法につながると考えた。本研究では動物の活性化ミクログリアモデルを用いて照射実験を行うものであるが、健常ラットに近赤外線を照射して脳内の影響をみた研究が他になかった。そのため、最初に8週齢の健常ラットの脳前頭葉部周囲への直線偏光赤外線の照射が、脳内のミクログリアや伝達物質にそれぞれどのような影響を与えるのかを比較/調査した。①照射なし②照射あり(1分・2分・4分・8分照射)の5グループにわけ、それら頭部を剃髪したラットの前頭部に対し市販のスーパーライザーを用いて、スポット照射用Bタイププローブにて出力100%でon5秒/off2秒の照射を1日1回、3日連続で行った。それぞれ照射後にラットを深麻酔の上、潅流脱血を行い、それらの脳を取り出し、近赤外線照射後おける脳内の①神経栄養因子②たんぱく質③メッセンジャーをリアルタイムPCR法により比較した。また照射前後のバイタルサイン(体温)も比較した。その結果、1)照射群では、非照射群に比べて、BDNFが上昇した一方、IL-1B、IL-6、IL10の減少がみられた。加えて2)照射群においては、照射後の体温上昇が認められた。以上より、近赤外線照射は、その波長が頭蓋を透過し脳内への影響を与え、BDNFやインターロイキン等を通して脳内炎症の低下や神経の増強を促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結果から、近赤外線照射は動物の頭蓋を通して、脳内の神経栄養因子やサイトカインに影響を与えうる可能性が示唆された。このことは脳内における炎症を抑え、傷害された神経保護を促進する可能性を含んでいる。このことは我々が考える精神疾患の活性化ミクログリア仮説に対する治療法の一助になるといえる。一方で、活性化ミクログリアの動物モデルにおいては、脳内において有意なミクログリア活性を見出せなかったため、投与法を含め、実験設定をもう一度見直す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画では脳内ミクログリア活性方法の一つである、polyinosinic-polycytidylic acid(poly I:C)投与モデルを使用しているが、結果次第によって、動物モデルをサイトカインを賦活化させミクログリア活性化を促すとされるGM-CSF(Granulocyte Macrophage Colony-Stimulating factor)の胎児期投与を検討する。活性化ミクログリアラットを2群にわけ、それぞれの頭部に対して、近赤外光を照射する。また照射しない群を対照群として、polyI:C照射群、polyI:C非照射群、PBS照射群及びPBS非照射群の4群を作成する。近赤外光の照射については、本実験において有効なものと考えられる、0.81μmの波長で120 J/cm2の近赤外光の照射を行い、近赤外光照射の効果を行動学的・組織学的手法を用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度内に行った、poly-IC投与における活性化ミクログリア動物モデル作成の進展がやや遅延し、当該助成金を用いて改めて動物モデルの精査を十全に行う必要があると判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
①poly-IC動物モデルの再検証のためのpoly-IC及び抗IBA-1抗体の試薬、SDラットの費用として使用する。 ②polu-IC動物モデル以外の動物モデルを検証するための試薬(GM-CSF)の費用として使用する。
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