研究課題/領域番号 |
15K15428
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
松尾 香弥子 浜松医科大学, 医学部, 特任准教授 (70399509)
|
研究分担者 |
鈴木 勝昭 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (00285040)
高貝 就 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任准教授 (10447807) [辞退]
涌澤 圭介 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任准教授 (30645239)
竹林 淳和 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (50397428)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 幻聴 / 統合失調症 / MRI / 神経イメージング / fMRI / 拡散強調画像 / モーフォメトリー / 精神疾患 |
研究実績の概要 |
1年目は計測プロトコルを確立し、データ取得を開始した。 (1)検査内容の確定とfMRI課題の作成:患者の症状評価のため、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の他、幻聴・妄想の評価尺度であるPSYRATS-J(日本語版PSYRATS)を入手して、研究分担者の一人である精神科医が一貫して実施することとした。また患者の社会性評価のため、VINELAND-IIを患者の家族を対象に、臨床心理士により実施することにした。認知機能検査としては検査項目の組み合わせに優れウェブでの採点が可能なCogStateを選択し、研究代表者が実施することにした。MRI検査は白質繊維評価のためにDSI、皮質ボリューム評価のためにT1強調画像、聴覚皮質機能評価のために聴覚課題のfMRIを行う。聴覚課題としては、「右」「左」という言葉を聞いたらそれぞれに対応するボタンを押すという「ボタン押し課題」と、朗読を聞いて「ありがとう」という言葉が聞こえたらボタンを押すという「朗読課題」の2つを行うことに決め、それらの課題提示プログラムを作成・準備した。 (2)関連部署への協力依頼:本研究には大きく次の部署が関係している。本研究の研究分担者(症状評価、MRI計測実施などの遂行)、統合失調症患者主治医ら(患者紹介、発症年齢や薬物投与などの患者概略シートの作成)、放射線科MRセンター、それに臨床心理士(VINELAND-II実施)である。各部署に出向いて実施事項を説明し、協力体制を整えた。また経費処理に関わる事務手続きを確認した。 (3)データ取得開始:主治医から入院患者・外来患者の中で本研究に該当する患者の紹介を受け、研究代表者がインフォームド・コンセントを行った。症状評価、認知機能検査、社会性評価(家族)、MRI検査を2~3日に分けて実施した。入院患者2名、外来患者2名の計4名のデータを取得した。また対照群として健常者データを10名程度取得した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に進展している。実施にあたって次のような問題に対処した。 (1)実施協力体制の構築。本研究の実施には研究分担者以外の人々の協力が不可欠である。特に、主治医からの患者紹介、検査室確保、各検査日スケジューリング、事務処理手順などの調整に時間が必要であった。最終的に構築した実施体制は満足できるものであったと考えている。 (2)検査自体に時間がかかること。本研究では比較的長時間の検査を複数実施している。症状評価(PANSS、PSYRATS-J)、認知機能検査(CogState)、社会性評価(VINELAND-II)、MRI検査のそれぞれにつき、患者の病状にもよるが、約1時間から2時間程度所要する。これらについて、患者およびご家族の来院可能日と、各検査者の実施可能日、MRI検査予定の空き状況などを突き合わせて、最終的な検査日程を決定した。患者1名の全検査を終了するのには1週間から3週間程度に及んだ。主治医による患者サマリーの取得にはさらに数週間を要する場合があった。なお、患者およびご家族にはこの他に、すべての検査に先立つ日程により、約1時間弱程度のインフォームド・コンセントを実施している。本研究に関わる皆様のご協力により、良好なスケジューリングが達成された。 (3)該当する患者が当初予想よりも少なかったこと。統合失調症患者は人口の約1%存在し、比較的高頻度であることが知られる。しかしながら、当施設は高度医療を要する患者が中心となっており、本研究の検査を受けることが困難な病状や、合併症がある患者も多く、当初の想定よりも、検査可能な患者の数は少なかった。しかしその分、患者各人についてきめ細かな検査が達成されたと考えている。 (4)人事異動の影響を受けたこと。求職活動などにより、研究実施日程に影響があった。そのような中でも、関係者間の連携により良質なデータが取得できたことは評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
大幅な研究計画の変更が必要であると考えている。 (1)人事異動による研究分担者の状況変化。本研究の1年目(H27)から2年目(H28)にかけて、大幅な人事異動があり、このため、1年目に構築した研究体制を維持することが困難になった。まず研究代表者が他大学に異動した。当初はそれでも元の施設におけるデータ取得を継続する予定で、そのように実施体制を構築していたのであったが、症状評価(一貫して同一評価者が実施する)を担当している研究分担者が退職することになったため、今後の新たな患者データ取得は困難となった。 (2)データ取得の終了。このため、データ取得を終了し、1年目に得られた患者4名、対照群約10名のデータを用いて、解析方法を工夫して、論文を仕上げる方向に計画を変更したいと考えている。 (3)研究分担者および資金配分の変更。今後のデータ取得を実施しないのであれば、計測にかかる費用は不要となり、代わりに解析のための高性能なコンピューターおよびソフトウェアの購入に資金を充てたいと考えている。解析作業は主に研究代表者が実施する。このため、研究代表者に資金が集約されるように変更を希望する。 以上、今後の本研究の推進には不確定要素が発生している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたほど該当する患者の計測数が得られなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
他の資金と合わせ、高性能のコンピューターおよびソフトウェアの購入に充てる。
|