研究課題
本研究は、電気けいれん療法(ECT)を受けることで精神疾患の患者に生じる複数の生理的変化を、「血清のNMR計測と独自のデータ解析」を行うことにより、包括的に識別し、ECTの反応・再燃予測モデルの確立を目指すことを目的とした。本法は、生体試料に含まれる豊富な情報を活用して、個々の試料を識別することを可能にする。京都大学医学部附属病院でECTの適応となった統合失調症・うつ病患者のうち、本人もしくは代諾者の書面による同意が得られた症例を対象に、1)ECT前、2)ECT5回目後、3)ECT終了後の3回のタイミングで血清採取と精神症状評価を行った。ECT群は30例程度の検体を収集することを目標とした。採取された血清については7テスラFT-NMR装置を使用したNMR計測を行い、数値化処理、解析の上で、治療反応性や再燃などの臨床指標との関連を調べた。平成28年度に、代表者らは当院で電気けいれん療法の対象となった気分障害・統合失調症の患者のリクルートを進め、治療前、治療 5回終了後、全治療終了後におけるデータ収集を行った。平成29年度にリクルートした4名を含め、現在までに20名の検体採取、臨床データの取得を終えている。全59検体について研究分担者の平川らが所属する日本医科大学においてNMR計測を終えており、診断、治療反応、副作用、再発の有無と言った臨床データとの相関を調べ、治療前の検体を用いた統合失調症9例、うつ病症例11例におけるECTへの治療反応予測について、現在学会発表、論文化の準備を進めている。