研究実績の概要 |
クプリゾンという脱髄剤を成体マウスに4週間投与すると、前頭前野に顕著な脱髄を生じさせることができるが、その後、通常餌に切り替えると正常程度まで再髄鞘化する。しかし、再髄鞘化期に隔離すると前頭前野のミエリンは低形成になることから(Makinodan et al, Faseb J, 2016)、このモデルを用い、ミエリン形成の程度とシナプス機能との相関を検証した。幼若期隔離マウスでは前頭前野V/VI層のミエリン低形成とV層錐体細胞への興奮性入力の頻度低下が認められるため、クプリゾンモデルでも同様の所見が得られるのではないかと予想した。しかしながら、脱髄した前頭前野の錐体細胞への興奮性入力の頻度は一定の傾向を示さず、大きなばらつきをもつ結果となった。脱髄時には同時にアストロサイトやミクログリアの活性化も誘導されるため、それらによるノイズである可能性が考えられた。 前頭前野のミエリン低形成をもつ自閉症モデルマウスのBTBRマウスを用い、前頭前野ミエリン形成と同部位機能との相関を検証した。先行研究により、生後21日目に離乳後、BTBRマウス(2匹)はC57BL/6Jマウス2匹)と同居すると社会性が回復することが明らかになっているが、我々は同マウスの前頭前野ミエリン形成とBTBR同士で飼育された場合のミエリン形成とを比較したところ、BTBRマウスの前頭前野低ミエリン形成はC57BL/6Jとの同居による改善することが明らかになった(Makinodan et al, Heliyon, 2017)。この結果は、近年活発に有効性が議論されている、自閉症患者への心理社会的介入効果の有効性を支持する。
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