本研究課題はゲノム中の全遺伝子のうち、RNAに転写されるエクソン領域やタンパク質に翻訳されるコード領域を対象とした全エクソーム解析をおこなう研究計画であった。しかし海外の研究グループから遺伝子近傍やイントロン領域などのエクソン領域以外にみられる反復配列の多型が性同一性障害(性別違和)と関連することを示唆する報告があった。本研究課題が当初予定していた全エクソーム解析ではエクソン領域以外の配列は近傍100bp程度の範囲しか変異・多型を検出できず、報告されている遺伝子間領域などに存在する変異・多型は確認することができない。また既報領域以外にも同様の変異・多型が複数存在していると予想され、今後は全ゲノム領域についての確認が必須になることから、手法を全ゲノム解析に移行して再解析をおこなう必要があった。そこで予備解析として既存サンプルを用いて全ゲノム解析をおこない検証した。その結果、イントロン領域や遺伝子間領域にみられる反復配列多型の検出も十分可能であると判断したため、2016年度より当初採択していた手法を変更し、10例のサンプルについて全ゲノム解析をおこなった。その際に参照ゲノム配列を最新のもの(hg38)にアップデートしたため、これまでに取得したエクソーム解析や実験動物をもちいた解析なども新たに統合し直し、それらのデータを基にバイオインフォマティクス解析を試みた。既存データや解析結果の一部について、第39回日本分子生物学会年会およびGID(性同一性障害)学会第19回研究大会にて報告した。
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