研究実績の概要 |
脂肪酸輸送における母体血から胎児の脳までの血液関門は、少なくとも(1)胎盤におけるmicrovillous membrane、(2)胎盤における胎児側の毛細血管内皮、(3)胎児脳における毛細血管内皮、(4)胎児脳の神経細胞膜、がある。(1)で発現されている脂肪酸トランスポーター(FATP: Fatty Acid Transport Protein)には、FATP1, 2, 3, 4, 6があり、(2)ではFATP1, 3, 4, 5があり、(3)ではFATP3, 4があり、(4)では、FATP3, 4があることを文献調査から確かめた。(1)から(4)で共通する分子はFATP3, 4であるので、この2つの分子に焦点を当てて研究を進めることにした。胎児の神経細胞を模倣すべく、ヒトiPS細胞を樹立し、それを分化して神経幹細胞塊(NS: neurosphere)、神経細胞へと分化したものを用意した。FATP3, 4の両遺伝子ともNSおよび分化させた神経細胞で発現していた。また、胎児脳における毛細血管内皮のモデルとして、マウス胎生期E18.5脳を用い血管内皮細胞マーカーとしてCD31を選択した。免疫組織化学的解析により、FATP3, 4ともCD31と共局在していた。FATP3遺伝子のリシークエンス解析では、47個の変異(これらのうち44個が新規でアミノ酸置換を伴うものは29個あった)を検出し、FATP4遺伝においては30個の変異(これらのうち17個が新規でアミノ酸置換を伴うものは14個あった)を検出した。これらの結果は、両遺伝子は稀な変異を多種類持つことを示す。上記の変異のうち、p.Gly209Ser (c.625G>A)は、minor allele frequencyが21.9%と最も高く、遺伝解析においても自閉症と関連が見られた(男性:p = 0.0054;女性:p = 0.0030)。
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