研究実績の概要 |
昨年度の研究で、脂肪酸トランスポーター(FATP: Fatty Acid Transport Protein)遺伝子のうち、FATP3, 4が血管内皮細胞および神経幹細胞塊で共通に発現しており、申請者の作業仮説に合致するものであることが判明した。また、FATP3, 4遺伝子のリシークエンス解析により、両遺伝子は稀な変異を多種類持つことが判明したが、自閉症(ASD)サンプルを用いた遺伝解析から、FATP4のp.Gly209Serはminor allele frequencyが21.9%と最も高く、自閉症と関連がみられた(男性ASDはGly209を多く持つ傾向、女性ASDではSer209を有意に多く持っていた)。そこで本年度は、FATP4のp.Gly209Serにつき、in vitro機能解析、in silico構造解析を行った。 ① in vitro機能解析 FATP4 c.625G (Gly209), c.625G>A (Ser209), およびcontrol発現ベクターを用意した。それらをbEnd3細胞にトランスフェクションした。bEnd3細胞は、マウス脳内毛細血管内皮細胞由来であり、脂肪酸の取り込みに内在性のFatp4を使っている。脂肪酸の取り込みは、蛍光長鎖脂肪酸アナローグであるC1-BODIPY-C12を用いた。Controlベクターに比較して、FATP4 Gly209コンストラクトは15倍、Ser209コンストラクトは20倍、それぞれBODIPYの取り込みが増加した。このことから、FATP4のp.Gly209Ser多型は機能変化を伴うものであることが判明した。 ② in silico構造解析 FATP4のp.Gly209Ser多型はタンパク表面に位置することが判明し、多型は他のタンパクとの相互作用に影響を与えている可能性が示唆された。
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