成体ラット脳から高純度のaOPCsが得られる分離培養法を確立した。P3で、ほぼ100%がolig2(+)、95%以上がNG2(+)のaOPCs培養となった。さらに、plexin-B3を発現するolig2(+)aOPCsが混入していることを発見した。成体ラット脳では、多数のNG2(+)aOPCsに混ざって、plexin-B3(+)細胞が約4分の1の割合で存在し、ほぼ全てがolig2(+)であった。その形態はNG2(+)aOPCsと酷似し、ミエリン鞘を持つpreOL様細胞も一部がplexin-B3(+)であった。BrdUの取り込み実験では、plexin-B3(+)aOPCsもBrdU(+)を取り込み、また一部はplexin(+)とNG2(+)aOPCsに分裂する像も認められた。すなわち、plexin-B3(+)aOPCsは、今まで報告のない新規aOPCsであり、NG2(+)aOPCsより若干分化が進んだ様態である可能性が高い。 大脳皮質拡延性抑制(Cortical spreading depolarization(CSD))と呼ばれる脳損傷モデルにおいて、損傷側遠位部、海馬傍回などの大脳皮質で、遅発性にplexin-B3(+)aOPCsの増殖が認められた。 ヒト病態関連研究では、in vitro、FGF2非存在下で培養aOPCsが培養神経細胞の4倍近くのAβ1-42を分泌すること、AD脳においてほぼすべての老人斑がplexin-B3(+)であることが判明した。これらの新発見は神経細胞のみがAβ分泌細胞であるとする従来の考え(アミロイド仮説)に一石を投じ、AD病態研究、創薬研究に新たな考え方を提起する。
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