研究課題
ペプチド・タンパク質のポジトロン放出核種の標識にはCu-64やGa-68などの放射性金属核種が利用されてきたが、近年新しい技術としてフッ素-18標識のフッ化アルミニウム([18F]AlF)イオンが注目されている。本年度はこのAlFを主に取り上げた。電気化学的濃縮チップで微少空間に捕捉したフッ素-18イオンを[18F]AlFイオンとして微量の水溶液中に回収する方法を開発した。また、この錯体形成反応を最適化するためのフッ素-18イオンと[18F]AlFイオンの分析法を検討した。その結果、HPLC分析では逆相系のC18カラムによるフッ素-18イオンの吸着が無視できないことを見出した。種々の市販C18カラムを試したが、すべてのカラムにおいて吸着現象が見られ、フッ素-18イオンによる標識反応の分析には担体を添加するなどの対策を施さないと、合成収率の過大評価になることが示された。この結果を踏まえ、本実験では、陰イオンと陽イオン交換カートリッジを用いる簡便な方法を採用した。キレータ―のモデル化合物としてDOTAおよびNOTA-GA-NHS esterを用い、生成した[18F]AlFイオンとの錯体形成を検討した。HPLC分析法を確立し、反応条件の最適化を行った。東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターのHM-12サイクロトロンを使用してCu-64を製造するため、ターゲットの照射と照射後にターゲットを自動的に遮蔽容器内に回収できる照射容器の基本設計を行った。
3: やや遅れている
当初Cu-64は、研究分担者の高橋が所属する理研ライフサイエンス技術基盤研究センターで製造されるものを使用して研究する計画でったが、彼が10月に慶応大学に異動したため予定が大幅に狂ってしまった。東北大学でも製造できるように準備を進めている。また、Cu-64に代わるGa-68の利用も検討したが、購入価格が予算と合わず断念せざるを得なかった。従って、今年度は実績の概要で示したように([18F]AlFで研究を進めた。
設計を終えた照射容器を試作し、東北大学でCu-64の製造の実現を図る一方、放医研でルーチンに製造されているCu-64の使用も検討する。
Cu-64製造用の濃縮ターゲット64Niの購入を予定していたが、理研での使用が付加となり、購入計画を一時中断した。また、これに代わる68Ge-68Gaジェネレーターの購入を計画したが、予算内で収まらないことが判明し断念した。
東北大学でのCu-64製造を目指し、次年度に64Niを購入する。また、余裕があれば照射容器の試作にも経費を使用したい。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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