研究課題
正常脳組織における放射線障害のメカニズムを明らかにすることを目的として、マウス大脳への放射線照射後に生じる急性期障害について検討した。Flk1-GFP/Flt1-tdsRed BACトランスジェニックマウス(Tgマウス)の大脳にX線60Gyを上方から照射して照射後7, 14, 28日後に脳切片を作成、大脳皮質(体性感覚野)における血管密度について非照射群と比較した。血管内皮細胞は血管内皮細胞増殖因子VEGFの受容体VEGFR1(Flt1)を強く発現することから、Tgマウスでは全ての血管がDsRed陽性として観察され、血管密度が解析された。Tgマウス大脳皮質の血管密度は、照射7, 14日後では非照射群と変わらないが、照射28日後では非照射群に比べ約10%の低下が認められた。野生型ICRマウス大脳にX線60Gyを上方から照射し、照射後7日目までの脳組織採取を行った。これら組織を用いて、脳組織内におけるVEGFの発現量、ミクログリアの形態変化、血液脳関門(BBB)のバリア機能に関与しているタンパク質の局在量および発現量を調べた。非照射群に比べて照射群の脳組織では、照射後0.5~7日にかけてミクログリアの活性化が認められた。また、大脳皮質における血管内皮細胞特異的に発現するタイトジャンクション(TJ)タンパク質Claudin-5の局在を調べたところ、非照射では血管壁に局在しているのに対して、照射後0.5~7日の組織ではその局在が認められなかった。一方、VEGFの発現量は照射後3~7日では減少していた。X線照射による脳における急性期障害の一つとして、BBBの破綻が示された。その機序は、血管透過性亢進因子として知られているVEGFの関与は少なく、X線照射により活性化したミクログリアが大きく関与していることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
PLOS ONE
巻: 11 ページ: e0159158
10.1371/journal.pone.0159158
Heliyon
巻: 2 ページ: e00222
10.1016/j.heliyon.2016.e00222