研究課題/領域番号 |
15K15449
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
磯野 真由 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 研究員 (90713511)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNA修復 / 染色体異常 / ゲノム不安定性 / 重粒子線 / 超高解像度顕微鏡 |
研究実績の概要 |
重粒子線はその粒子が通過した軌跡に添って発生する高密度電離により、局所集中的に多種類のDNA損傷を生み出す。このような局所集中型DNA損傷はクラスター損傷と呼ばれる。その中でもDNA二本鎖切断(DSB)を含むクラスター損傷は、重粒子線によって誘発される細胞死の最大の要因だと考えらえている。しかし現在まで、技術的限界により細胞レベルでクラスター損傷を正確に可視化出来ていない。本研究では申請者が所属する群馬大学が新たに導入した次世代超高解像度顕微鏡OMXを用い、蛍光免疫染色法によって損傷部位をラベルすることで重粒子線誘発クラスター損傷の可視化を試みる。OMXはxy軸解像度の改善だけでなく、技術的に高解像度化が困難であったz軸の解像度を飛躍的させているため、現在世界で最も高い空間解像度を有する蛍光顕微鏡である。例えばDSB末端に1-2分子のみ結合するKu70/80は、蛍光顕微鏡では可視化不可能とされていたが、OMXによりKu70/80の集積が可視化可能であることが報告されている(Britton, JCB, 2013)。Ku70/80は1つのDSBに対し1つのKu70/80 foci(集積体)を形成するため、本研究ではOMXを使用することで重粒子線誘発クラスターDSBの存在を世界で初めて可視化出来ると考えている。 さらにクラスター損傷の可視化により、重粒子線誘発DSB・塩基損傷・一本鎖切断に対する修復の連携を解明する。この複合的修復ネットワークの存在を明らかにすることは、重粒子線誘発DNA損傷時特有の生命現象である可能性があり、当該分野の研究概念を大きく変えると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、3D超高解像度顕微鏡OMXを使い、DSB発生部位の同定を目的としたKu80 fociの検出系の条件検討を行い、Ku80 fociが可視化することが出来るようになった。またDSB周辺の塩基損傷及びSSBの分布を測定するため、新規蛍光タグであるSNAP/CLIPを融合させたSNAP-OGG1、CLIP-XRCC1発現ベクターを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
Ku80 fociと同時に塩基損傷及びSSBの分布を測定するため、昨年度に作成したSNAP-OGG1、CLIP-XRCC1発現ベクターからSNAP-OGG1、CLIP-XRCC1発現細胞株の樹立を行う。これら細胞株を用い、3D超高解像度顕微鏡OMXにより、重粒子線照射を受けた細胞内での損傷クラスターの可視化からDNA修復ネットワークの解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Ku80 foci検出のための条件検討に想定していた以上に時間がかかり、DSB部位同定のための実験が少し遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
Ku80 fociを観察するための1次抗体及び2次抗体を購入する。またOGG1及びXRCC1は蛍光退色が少ないSNAP/CLIPタグに切り替えたため、SNAP/CLIP用の蛍光基質を購入する必要がある。また内在性タンパク質を認識する抗体を購入し、超高解像度顕微鏡における蛍光染色が可能かどうかを試みる予定である。さらに初年度に計画していたもう一つのSSBマーカーであるPolyADP-riboseに対する抗体を購入する。
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