研究課題
重粒子線はその粒子が通過した軌跡に沿って局所集中的に多種類のDNA損傷(クラスター損傷)を生み出す。その中でもDNA二本鎖切断(DSB)を含むクラスター損傷は、重粒子線によって誘発される細胞死の最大の要因だと考えられている。しかし現在まで、技術的限界により細胞レベルでクラスター損傷を正確に可視化出来ていない。本研究では次世代3D超高解像度顕微鏡OMXを用い、蛍光免疫染色法によって損傷部位をラベルすることで重粒子線誘発クラスター損傷の可視化を試みた。平成27年度以降、DSB末端に1-2分子のみ結合するKu70/80をDSB発生部位マーカーとして用い、重粒子線誘発DSB発生部位の同定を行った。Ku80 foci検出の条件検討を行い、Ku80 fociを可視化出来るようになった。しかしながらその後の解析では、X線照射後のDSB末端においてKu80 fociの検出効率は部分的であることが明らかになった。Ku80 fociの検出感度を上げるため、代替としてGFP-Ku80発現細胞株を作成しGFP-Ku80の検出を行った。しかしながらGFP-Ku80 fociは検出出来なかった。別のアプローチとして、重粒子線照射によって生じるDSBを検出するため、DSB末端の一本鎖DNA領域に集積するRPAのfociを対象に解析を行なった。その結果、重粒子線照射によって生じた1つのgH2AX foci内には複数のRPA fociが検出され、RPA foci同士は約700 nmの距離で近接していることを明らかにした。これは重粒子線照射では複数のDSBが非常に近接して生ずることを示しており、染色体内または染色体間での欠失や転座といった染色体異常の誘発を助長する要因となることが示唆された。
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Cell Reports
巻: 18 ページ: 520-532
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.12.042