研究実績の概要 |
本研究では、デュアルエナジーCT 装置を用いて、2つの異なるエネルギーのX線から得られる個々の元素の線減弱係数から、従来得られなかった新しい組織からの情報を得ることを目的として研究を進めた。今回、異なるエネルギーの2つのX線から、組織内のヨードを同定して、組織内のヨード濃度計測することに着目した。院内のIRBからの承認を得た上で、放射性ヨードを用いた内用療法前の甲状腺機能亢進症患者における甲状腺内ヨード量と甲状腺シンチグラフィーでの放射性ヨード集積率(3時間・24時間)との相関について検討を行った。 甲状腺内にヨードが集積した状態は通常のCTでも高吸収に認められる。しかし、デュアルエナジーCT 装置を用いて、2つのX線エネルギーから計測されたヨード量との相関は中程度(r=0.429, p<0.05)で、予想された両者の相関よりも弱かった。これは1)甲状腺の存在する周囲には鎖骨や頚椎・肩関節などが存在しており、ビームハードニングエフェクトによるX線のアーティファクトのため、CT値が正確に計測できていない・2)甲状腺機能亢進症患者では甲状腺内の血流が豊富なため、甲状腺内で拡張した微細な血管が結果として単位体積当たりの甲状腺内のCT値を下げている、などの可能性が考えられた。 甲状腺シンチグラフィーによる放射性ヨード集積率と甲状腺内ヨード量の相関についての検討では、放射性ヨード経口摂取後3時間の集積率と甲状腺内ヨード量のみに、高い陰性相関が認められた(r=-0.680, p<0.05)。今回の対象患者は2週間前からヨード制限食を摂取しており、高度のヨード制限を行っていたため、ヨード排泄の亢進を反映していたと推測された。甲状腺機能亢進症では、ヨードの摂取率の亢進だけでなく、ヨードの排泄率も亢進しているものと考えられた。
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