研究実績の概要 |
従来から臨床で用いられているPET, MRIの水動態画像は、水分子の受動的拡散を基本概念とする理論により開発されてきたが、アクアポリン(AQP)という新しい水チャンネルに基づく理論の再構築が求められている。AQPによる血中水分子の脳内移行に関する詳細な報告はこれまでになく、新規画像法の基盤となるミクロレベルでの再検討が必要である。脳における水分子の動態を、AQPによる選択的輸送という物質的観点から解明し、AQP機能による恒常性の維持と、機能破綻による病的状態の描出法等を、組織レベルから生体画像におけるマクロレベルまで、解析法を含めて検討するため、水分子のミクロオートラジオグラフィー法(miARG)を開発し、水動態の分子レベルでの解明に取り組んだ。また、基礎的指標を画像解析に応用する取り組みとして、O-15水PET画像の画素単位での計算法を開発した。 miARGでは、ラットにトリチウム水([H-3]H2O)を静脈内投与した後、ラット屠殺時間を変化させて脳細胞内[H-3]H2O濃度の経時的変化を観察した。脳細胞内[H-3]H2O分子数の経時的な変化を計測することで、細胞移行速度を理論的に計算する方法を考案した。一方、O-15水PET画像における画素単位計算法の開発では、入力関数を2段階で補正する方法を取り入れることにより、局所入力関数の推定が精度高く可能となり、詳細な水の動態が解析可能となった。また、局所脳血流量を画素毎に計算するソフトを開発し、高精度水動態定量画像の臨床的有用性が示され、学会および英文論文(Ann Nucl Med)にて発表した。さらに、O-15水PETの非侵襲的定量法の研究に取り組み、動脈採血法と遜色のない高い精度で脳血流量および動脈血液量を測定する方法を開発し、論文報告した(Phys Med Biol)。
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