脳卒中は現在でも日本の主死因であり、予後に重度の後遺症を残すことが多い。治療には血栓溶解法が奏功しているが、適用は発症後数時間以内と限定的であり、更なる治療法が望まれている。適切な治療薬の開発には、梗塞発症後の脳内状態を捉える必要であることから新たな画像診断法が期待される。我々は酢酸の誘導体であるフルオロ酢酸にフッ素18を標識した[18F]FACEを用い、脳虚血-再灌流モデルラットの障害側における集積変化について陽電子断層撮影(PET)を行った。その結果、再灌流後の障害側において健常側よりも[18F]FACEの集積が増加することを確認した。以前の研究からアストログリアの再活性化と関連していることが示唆されていたが、本研究結果ではアストログリアの再活性化する以前の段階である再灌流前の虚血中からすでに [18F]FACEの増加が確認された。通常、虚血中では脳血流は著しく低下することから投与されたPETプローブは健常側に比べて集積は低下するが、[18F]FACEは血流に依存することなく取込みが増加する現象が認められた。[18F]FACEの取込み増加が認められた虚血領域におけるアストログリアの変化について調べるため、脳組織切片を作製し免疫組織化学的手法による観察を行った結果、虚血領域におけるアストログリア再活性化を指標とするGFAP陽性像と[18F]FACEの取込み分布が一致しなかった。また、虚血領域における[18F]FACEの細胞内局在を調べた結果、酢酸と同様の細胞内挙動を示すことが予想されたが、[18F]FACEは酢酸とは異なることが判明した。
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