研究実績の概要 |
本研究では、覚醒下でオペラント課題を遂行させながらPET撮像を行う「小動物オペラント-PET撮像システム」を確立し、「脳内自己刺激行動」に関わる神経活動を可視化することを目的とした。脳内自己刺激(intracranial self-stimulation; ICSS)はオペラント条件づけの一つであり、動物はレバー押しにより脳内報酬系と言われる中脳辺縁系ドーパミン投射系への電気刺激を報酬として得ることを学習する。このICSSの神経基盤について、脳全体の神経ネットワークとしてのICSSによる脳内神経活動の変化については不明点が多く、我々はICSSをラットに遂行させ、[18F]FDG-PETによりその課題に関わる神経回路のマッピングに取り組んできた。 まず本助成の開始年度である27年度から28年度初頭にかけて「オペラント-PET に向けた実験環境の整備」を完了し、以後ICSS習得動物を用いたPETプロトコルを開始した。プロトコルの概略としては、あらかじめ9週齢のWistarラットの内側前脳束に双極性電極を一側性に刺入し、2週間の回復期間をおいてICSSの条件づけを行い学習させた。十分にICSSを習得したラットに18F-FDGを尾静注しその後30分間ICSSを遂行させた場合と、単にオペラント装置内に30分間置いた場合の脳内FDG集積を比較した。ICSS遂行後にPET撮像を行い、それによって得られた各々のPET画像データをSPM解析し、ICSS遂行により賦活または逆に抑制される脳領域を検索した。 SPM解析の結果(Paired t test, uncorrected P = 0.005)では、賦活部位として右側視床後外側核、背側水道周囲灰白質、右外側水道周囲灰白質、左側前庭神経外側核、巨細胞性網様核が認められており、一方で抑制部位として前障、左側側坐核、島皮質、左側海馬台などが描出された。
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