本課題は低侵襲機能再生治療への粒子線利用の検討を目的とし、そのための損傷と修復過程の解析を行った。マウスを用いた実験では、実験に用いる蛍光タンパク質発現マウスのC3HならびにBALB/cマウスへの遺伝的背景交換のための交配を5世代終了した。この遺伝的背景交換を行ったマウスより調整した骨髄細胞を、胸部半分に炭素イオン線を照射したマウスに移植し、皮膚、肺への生着を病理標本ならびにPCR法により解析している。また同モデルにおいて、細胞誘導能を評価するために、腫瘍細胞の移植を行ったところ、照射肺への顕著な生着の増加が認められた。加えて、マウス移植腫瘍の局所に炭素イオン線を照射し、その経時変化をMRIならびに病理解析を用いて解析を行った。先の正常組織を用いた解析とは異なり、照射による損傷の影響は照射野を超えて認められ、対象による応答の違いが示唆された。 3次元培養系での実験では、使用するゲルの改良と評価をイタリアの研究グループと進めながら、粒子線の直線性を利用した部分照射とその後の解析を行った。培養期間に依存した低酸素領域の増加などの基礎データを収集し、その結果に基づき改良を進めた。 プラナリアを用いた解析では、粒子線と光子線による損傷の違いがその感受性と致死誘導の違いにより明らかになった。さらにPIXEを用いた解析で明らかになった特徴的な元素の蓄積と損傷修復の関係について、切断したプラナリアと部分照射したプラナリアを用いて比較解析を行った。
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