研究課題/領域番号 |
15K15467
|
研究機関 | 国立研究開発法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 克俊 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 研究員 (20589650)
|
研究分担者 |
下川 卓志 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, チームリーダー (20608137)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 粒子線治療 / 炭素イオン線抵抗性がん細胞株 / 細胞膜修復 |
研究実績の概要 |
がん細胞の放射線抵抗性に対する細胞膜修復の関与を明らかにすることを目的とし、X線及び炭素イオン線を繰り返し照射して樹立した放射線抵抗性がん細胞株X60及びC30細胞を用いて、細胞膜修復を評価するための培養や機械的刺激条件について検討した。また、リソソームと細胞膜の融合を阻害する薬剤であるタンニン酸とVacuolin-1の細胞毒性を求め、測定時の使用濃度を至適化した。 上記に加え、各細胞におけるリソソームの性状や含有量をはじめ、リソソームが関与する細胞学的機能や発現分子について解析した。この解析の結果、X60細胞におけるリソソームはC30細胞と親細胞株であるマウス扁平上皮がん細胞株NR-S1に比べて顕著に拡大しており、さらに含有量も著明に多いことが示された。また、X60細胞ではミトコンドリア、ATP(アデノシン三リン酸)、ROS(活性酸素種)含有量が他の細胞に比べて顕著に亢進していること、血清飢餓時に起こるオートファジーが他の細胞よりも早期に起こることが示された。さらにX60細胞では、これらに共通して関与するタンパク質であるmTORのリン酸化が他の細胞に比べて有意に亢進していること、mTORが関与する情報伝達経路の阻害剤であるラパマイシンの投与はX60及びC30細胞のX線と炭素イオン線抵抗性をNR-S1細胞と同等程度まで低下させることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞膜修復能の評価のための実験条件は現在も検討している最中である。一方、平成27年度に得られた研究成果であるX線及び炭素イオン線抵抗性がん細胞株X60におけるmTORリン酸化の亢進とラパマイシンによるX線及び炭素イオン線抵抗性の抑制について論文投稿の準備が進んでいる。さらに、本研究開始時に使用予定であったタンニン酸とVacuolin-1に加えてラパマイシンも細胞膜修復阻害剤の候補である可能性を示すことできたことから、研究目的の達成に向けて進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、細胞膜修復能の評価のための培養条件と機械的刺激条件を定め、細胞膜修復能を細胞間で比較する。さらにタンニン酸、Vacuolin-1及びラパマイシンの投与後の細胞修復能も評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は実験の進捗に合わせて必要な物品を購入したが僅かに剰余額が生じた。しかし、この額は僅かであり、ほぼ予算額を使用できたと言える。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の剰余額はごく僅かであることから、平成28年度は引き続き実験の進捗に合わせ、予定額内で必要物品の購入するとともに、平成27年度よりもさらに計画的に使用する。
|