研究課題
マウス扁平上皮がん細胞株NR-S1、NR-S1細胞由来の放射線抵抗性がん細胞株X60及びC30細胞における細胞膜修復能の違いを評価するため、各細胞に対しストレプトリジンO(SLO)を投与することで細胞膜穿孔を与え、Propidium Iodide(PI)陽性細胞数の経時的変化を計測した。その結果、どの細胞でもPI陽性細胞数は穿孔後の時間経過に伴い増加すること、X60細胞におけるPI陽性細胞数は、他の細胞よりも顕著に低いことが示された。次に穿孔に伴うリソソームの時間的変化を解析した。穿孔前のX60細胞のリソソーム含有量及びその蛍光強度は他の細胞より明らかに亢進していた。また、NR-S1細胞やC30細胞のリソソームの大きさは穿孔約3分後から増大する一方、X60細胞では穿孔前とほぼ同様であり、約20分後にその大きさが増大することが示された。これらの結果は、X60細胞は穿孔を受けにくく、かつ、エクソサイトーシス等が関わる細胞膜の代謝が基本的に活発であることを示唆している。そこで、Caイオンの細胞内流入に伴うエクソサイトーシスに必要とされているSynaptotagmin VIIと、SLOの標的であるコレステロールを多く含む脂質ラフトのマーカーの一種Flottilin-1の局在を免疫蛍光染色法により解析した。その結果、Synaptotagmin VIIの局在は、穿孔前後で細胞間に大きな差は見られなかった。一方、NR-S1細胞とC30細胞における細胞膜上のFlottilin-1ドメインは穿孔後に明確に確認されるが、X60細胞では穿孔前からFlottilin-1ドメインが確認でき、その様子は穿孔後もほぼ同様であった。以上から、X60細胞における細胞膜穿孔の抵抗性やその修復には、脂質ラフトの様な細胞膜構成成分の違いも関与する可能性が示された。
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Oncology Reports
巻: 36 ページ: 2946-2950
10.3892/or.2016.5122