研究課題/領域番号 |
15K15468
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
梅田 泉 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, ユニット長 (40160791)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 低酸素 / イメージング / Tc-99m / SPECT / がん / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
固形腫瘍内低酸素領域は、放射線治療や化学療法への抵抗性と密接な関係にあり、低酸素領域可視化はがん診療最適化の重要な課題である。これまでの開発は放射線増感剤を土台としたニトロイミダゾール含有化合物が主体で、またその大半はPETプローブであった。本研究では、汎用性を高めるためSPECT核種を用い、かつ従来とは全く異なる機序で低酸素領域を可視化するプローブ開発を目指した。 構造内にTc-99m結合部位とニトロベンジル基等の脱離基をもつコンパクトな分子を分子設計の土台とした。低酸素環境での還元反応によって脱離基が脱離し、構造変化を起こし、低酸素腫瘍細胞に蓄積させる分子設計を行った。また、候補化合物を液相合成し、培養細胞ならびに担がんマウスを用いて評価した。 培養細胞での検討では、新規プローブは低酸素状態に依存した集積を示し、HPLC-MSの解析より想定した還元代謝による代謝物生成が確認され、分子設計の妥当性が検証できた。担がんマウスを用いた検討では、候補化合物では、投与後、速やかに腎排泄され、腫瘍内低酸素領域に集積するに至らなかった。そこでプローブ構造設計でTc-99mに対する配位原子、構造内のカルボニル基の位置や数、脱離基の構造等を変化させ、プローブの物理的性質を調整して体内動態の最適化を図り、腫瘍内低酸素領域への集積の改善を図った。何樹種理のプローブを検討し、良好な腫瘍集積、腫瘍/正常組織比を得るものを見出し、in vivoイメージングで腫瘍への集積を可視化できた。摘出腫瘍薄切切片によるオートラジオグラフィと低酸素領域免疫染色領域には良好な相関が認められ、低酸素領域がin vivoで可視化できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は計画に沿って比較的順調に進んでいたが、28年度に予定していた有用性の評価の段階で、当初予定より時間がかかっている。低酸素イメージングの臨床有用性としては、癌の悪性度や予後の推定、放射線治療での難治部位推定などが想定されるが、従来の研究でこれらを明確に示したものはほとんどなく、極めて難しい課題である。現在、低酸素環境標的治療薬の効果予測が可能かなどの検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発した低酸素イメージングプローブは、腫瘍内低酸素領域をin vivoで描出することができ、かつ汎用性の高いプローブと考えられる。今後はその臨床有用性を明確にし、臨床応用への展開を果たしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は計画に沿って比較的順調に進んでいたが、2年時に予定していた臨床有用性の評価の段階で、当初予定より時間がかかっている。評価系を確立した上で、動物実験を実施する予定であるが、開始が遅れたことから次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
腫瘍内低酸素状態の異なる実験動物モデルを作成し、開発プローブによる低酸素状態の評価と治療効果との関係を検討の予定である。次年度使用額は実験動物、放射性核種、その他実験用試薬などの購入に充てる。
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