研究課題
糖尿病に対する先端細胞療法である膵島移植では、門脈内への移植が世界標準となっているが、強力な原始免疫反応の惹起や出血・塞栓といった合併症が不可避であり、理想的な移植部位とは程遠い。一方、皮下への移植は手技が極めて容易である上に安全・低侵襲であり、まさに理想的な次世代技術である事は疑うべくもないが、乏血管性という致命的課題を有しており、他の部位と比べて移植成績が著しく不良であるため、これまで臨床応用には至らなかった。そこで本研究においては、皮下における新生血管床構築の学理を究明し、高付加価値を有する新規血管新生ペプチドを導入することにより、臨床応用可能な皮下への膵島移植法を確立する事を目的としている。本年度は、まず膵島移植部位となる皮下に、新規血管新生ペプチド(AGP)を含有するアガロースを留置する事により新生血管床を構築するための条件の至適化を試みた。その結果、新規血管新生ペプチドはbFGFに比較して皮下の炎症惹起作用は弱いものの、局所に100-200ug投与することにより、浸出液や出血を伴わずに安全に有効な新規血管床を構築し得ることが判明した。bFGFは血管床構築に有用であることが既に報告されているが、腫瘍構築のリスクを伴うことや、浸出液や出血を伴うリスクがこれまでに指摘されている。今回の検証により新規血管新生ペプチドは、より血管新生に特異的であることが判明したため、実用化に際してはコスト削減も考慮し、bFGFと新規血管新生ペプチドを併用するプロトコールが極めて魅力的であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
申請の計画通り、新規血管新生ペプチドの皮下血管床構築能についてbFGFを対照群として検証を行い、有効濃度の至適化を行うことに成功した。
当初の計画通りH28年度は移植膵島の生着に関して検証を推進していく予定である
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Journal of Diabetes Research
巻: in press ページ: in press
Applied Microbiology and Biotechnology
巻: 99 ページ: 10489-10499
10.1007/s00253-015-6923-4