研究課題/領域番号 |
15K15473
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉川 清次 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40333562)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | EMT / MET / miR-200 |
研究実績の概要 |
EREレポーターを組み込んんだMCF7細胞においてE2 depletion前後のERE転写活性を測定したところ予想に反して減少した。Estrogen responsive elementを指標にしたスクリーニングの続行は困難と判断した。そのため当初の実験計画を変更し、MET誘導shRNAのさらなるスクリーニングを行いMET誘導のメカニズムを探索することとした。最終的にshP1に加えてshH1の2つのshRNAを同定した。shH1の標的遺伝子に対するshRNAを2つ作成したが、shP1と同様にKD効果とMET誘導の間に相関関係は見られず、shH1のoff target効果であると考えられた。shP1とshH1のMET誘導効果は幅広く間葉系腫瘍細胞株 (乳がん・膠芽腫・骨肉腫・滑膜腫・膵臓がん・肺がん・線維肉腫)に幅広くMETを誘導し、共通の機構があると考えられた。shP1とshH1の配列を比較にて11 bpの相同配列を同定し、内7bpはMET誘導が報告されていmiR-200ファミリーのseed配列に一致した。一方shP1とshH1では、増殖抑制効果に違いが認められ、shH1の方が強い増殖抑制効果を認めた。U251膠芽腫細胞株に対してはshP1・shH1・miR-200cのすべてで増殖抑制効果が認められる一方、MDA-MB-231細胞では、shP1・miR-200cは増殖を促進する一方、shH1は増殖を抑制した。shP1誘導231細胞の解析では、TERT・ERBB3 mRNAの増加、細胞周期G2M/polyploid集団の増加を認めた。MET誘導は細胞周期を介して231細胞の増殖を促進すること、DNA修復に関係するH遺伝子機能抑制が上皮化細胞に有効であることを示唆している。以上よりmiR-200 seed配列を含む遺伝子が新たな標的になりうることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EREレポーターのvalidationの結果、screeningには不向きであることが判明し、当初予定していた計画を変更することになったが、新たなEMT/METのpositive selection用 dual reporterを作成し、それを用いたスクリーニングにて別のshRNA (shH1) を同定することができ、shP1・shH1のMET誘導の機構が明らかになった。shP1とshH1のMET誘導後の増殖力に違いを発見につながり、miR-200cのseed配列+標的遺伝子のknock downが新たな治療戦略になるとの着想を得た。miR-200cによる上皮化により化学療法・放射線療法耐性を克服し感受性を再獲得し、同時にH遺伝子のknock downにより上皮化細胞の増殖を抑えることで、heterogeneityを持つがん細胞の種々の細胞集団を標的にして根治させることが可能になると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のようにトリプルネガティブ乳がん (TNBC)のluminal分化誘導は未だ実現できていないが、miR-200cのseed配列+標的遺伝子shRNAからなる hybrid shRNAによる標的knock downが新たな治療戦略になるとの着想を得た。特にshH1の増殖抑制効果が顕著である。今後はmiR-200cのseed配列を持つ標的遺伝子の網羅的な解析を通じて、TNBCに効果を示す配列の同定を行う。これまでの研究で、doxycyclineによるH-RAS誘導・tamoxifenによるSNAIL活性化EMT誘導する、人工がん幹細胞モデルを用いたscreeningにより間葉系のがん幹細胞に対して致死効果のあるshRNAを複数同定している。そのうちのD・S・N遺伝子はmiR-200c seed配列を持つことを確認している。これらのhybrid shRNAの増殖抑制効果をin vivo, in vitroの両方で確認し、難攻不落であったTNBC, GBMの治療に結びつけたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
EREレポーターを組み込んんだMCF7細胞においてE2 depletion前後のERE転写活性を測定したところ予想に反して減少した。Estrogen responsive elementを指標にしたスクリーニングの続行は困難と判断した。そのため当初の実験計画を変更し、MET誘導shRNAのさらなるスクリーニングを行いMET誘導のメカニズムを探索することとした。新たなEMT/METのpositive selection用 dual reporterを作成し、それを用いたスクリーニングを行い、別のshRNA (shH1) を同定することができ、shP1・shH1のMET誘導の機構が明らかになった。shP1とshH1のMET誘導後の増殖力に違いを発見につながり、miR-200cのseed配列+標的遺伝子のknock downが新たな治療戦略になるとの着想を得た。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後はshH1の増殖抑制効果の検証を行うと同時に、miR-200cのseed配列を持つ標的遺伝子の網羅的な解析を通じて、TNBCに効果を示す配列の同定を行う。これまでの研究で、doxycyclineによるH-RAS誘導・tamoxifenによるSNAIL活性化EMT誘導する、人工がん幹細胞モデルを用いたscreeningにより間葉系のがん幹細胞に対して致死効果のあるshRNAを複数同定している。そのうちのD・S・N遺伝子はmiR-200c seed配列を持つことを確認している。これらのhybrid shRNAの増殖抑制効果をin vivo, in vitroの両方で確認する。
|