研究課題/領域番号 |
15K15483
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武冨 紹信 北海道大学, 医学研究科, 教授 (70363364)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 外科 / 発現制御 / 臓器灌流 / B型肝炎 |
研究実績の概要 |
マウスの肝冷保存、移植モデルを確立し、さらに、マウスの肝体外灌流の至適条件を確立した。我々が開発したマウス肝臓用体外灌流装置は室温環境下で任意の温度、流量に設定可能であり、種々の温度で長時間の酸素化体外灌流が可能であった。冷保存時間の延長と共にレシピエントの移植後生存率は低下したが、数時間以内の冷保存に酸素化体外灌流を施すと、ある特定の条件ではほぼ全例が生存し得た。この安定したマウス肝移植モデルはもとより、マウス肝臓を酸素化体外灌流後に移植し、生存率の評価ができる研究機関は世界でもごくわずかしかない。さらにわれわれはCRISPR/Cas9によるのノックアウト細胞の作製をはじめ、常時実施できるようにした。マウス肝移植モデル、マウス肝酸素化体外灌流、新規灌流液、CRISPR/Cas9系を確立したことにより、これらのツールを用いた詳細な検討ができるようになった。マウス肝移植、マウス肝体外灌流モデルを用いて、siRNAのリポフェククション の効率を検討し、灌流温度が導入効率に強く関与すること、また、特定のsiRNAの投与によって肝移植後のmRNA, タンパク発現のレベルを制御できることを明らかにした。また、低温下ではリポフェクションに用いる脂質の流動性が大きく異なり、他の導入法と比べ、極めて温度条件の設定が重要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
耐術能の低いヒト肝細胞キメラマウスにおける肝移植モデルの確立」は、マウス肝移植モデルの作成とヒト肝細胞キメラマウスの繁殖、ヒト肝細胞キメラマウスを用いた肝移植モデル作成に分けられる。マウス肝移植モデルは確立できた。ヒト肝細胞キメラマウスは個体の購入に加えて、繁殖に時間を要し、高額の飼育関連費用が発生する。それ故、他の技術要素の確立を先行させた。具体的にはマウス肝臓を体外で任意の温度で酸素化機械灌流する方法を探索し、体外でsiRNAを投与し、移植直後からのタンパク発現を制御し得るかを検討した。これらの検討に際し、マウス肝臓の体外灌流がラットで確立したものとは大きく異なり、また、体外灌流によるsiRNA投与の効果、トランスフェクトに使用するリポ製剤の副作用が温度条件によって異なること、など、多くの知見が得られた半面、当初の予定を大幅に超える時間と費用を要した。当初予定を上回るコストが生じてしまったため、総額500万円で計画された全体の計画の一部は断念せざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究から得られた知見は、ゲノムに組み込まれない安全な方法で移植後早期のグラフト内タンパクの発現を自由に制御できる技術が確立されたことを意味しており、その意義は大きい。ヒト肝炎の増悪に関与するタンパクの発現、機能を体外灌流により制御し得るかを検討中であり、再現性、信頼性、安全性を検討後、特許出願を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27, 28年度にマウス化に職、体外灌流によるsiRNAの導入モデルを完成した。マウス肝移植モデルは完成したものの、B型肝炎ウィルスに持続感染したヒト肝細胞が増殖するキメラマウスの肝臓を用いて上記の検討を行うためには、バイオハザード対策、倫理審査が必須であり、より安全に配慮した研究計画に見直す必要が生じた。この対応に予想以上の時間を要した。このため、平成29年度は、非感染マウス肝臓を用いた肝移植モデルで、特定の遺伝子のノックダウンの有効性に関する検討を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスの購入や飼育費用、個体への投与用のリポフェクション試薬、siRNA, miR、遺伝子解析、タンパク解析に必要な消耗品に使用する。
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