研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症機序として,腸内細菌叢と腸管上皮バリア機能の異常,それに関連した肝へ流入するLPSの増加が指摘されている.p62およびNrf2遺伝子の二重欠損(DKO)マウスが,通常食餌の過食肥満より脂肪性肝炎を発症する.そこでDKOマウスを用いて,腸内細菌叢と腸管上皮バリア機能の異常に主眼をおき,NASHの発症機序について検討した.各系統マウスの肝,腸管,血清,糞便を解析した.また,血清および糞便中LPS含有量を測定した.T-RFLP法及び次世代シーケンサーにより腸内細菌叢を解析した.FITCデキストラン経口投与により腸管透過性を評価した.さらに,CRISPR-Cas9システムを用い,各遺伝子を欠損したCaco-2を作成し,バリア機能を評価した.In vivo解析-糞便中LPS濃度はp62-KO,DKOマウスにおいて野生型に比べ有意に増加していた.一方,血清中LPS濃度はDKOマウスでのみ増加していた.また,腸内細菌叢を解析したところ,DKOマウスでグラム陰性菌の割合が増加していた.さらに,次世代シーケンサーにてPCoA解析したところ,WTとDKOマウスの細菌叢の組成が異なっていた.特に,グラム陰性菌であるPorphyromonadaceaeとParaprevotellaceaeが増加していた.FITCデキストランの腸管透過性はNrf2-KO,DKOマウスにおいて有意に亢進していた.In vitro解析-Caco-2細胞を単層培養し透過性の指標である細胞膜抵抗値を測定したところNrf2欠損で低下していた.また,Caco-2細胞のタイトジャンクションタンパク質の発現は,Nrf2欠損により低下した.DKOマウスのNASH発症には,グラム陰性菌の増加と腸管上皮バリア機能の脆弱性によるLPSの肝への流入量の増加が重要な因子であると考えられた.
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