研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)において,肝臓の自然免疫細胞であるクッパー細胞の活性化による炎症性応答が,その病態の進展に中心的な役割を担う.一方,迷走神経の遠心性シグナルが,免疫細胞に対してα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7nAChR)を介した抗炎症作用を持つことが知られている.本研究では,肝臓迷走神経がα7nAChRを介してクッパー細胞の活性化を制御し,NASHの進展に対して抑制的に働くという仮説に基づき,動物実験による検証を行った.昨年度までの研究で,野生型マウスに対して肝臓迷走神経を選択的に切離することにより,NASHの組織像が増悪し,クッパー細胞の活性化がそれに影響することを確認した。また,in vitroの検証として,マウス肝臓から分離した初代クッパー細胞を用いて,α7nAChR作動薬が同細胞に対して抗炎症作用を持つことを実証した。本年度は,クッパー細胞におけるα7nAchRシグナル経路を選択的に遮断する手法として,骨髄移植によるキメラマウスを用いたモデルによる検証を行った.具体的には,クロドロン酸リポソームの投与によりクッパー細胞を除去した野生型レシピエントに,ドナーとしてα7nAChR欠損(α7KO)マウスの骨髄細胞を移植することで,クッパー細胞を特異的にα7KOに置換したキメラマウスを作成し,NASHへの影響を評価した.α7KO キメラマウスにおいて,クッパー細胞が高度な炎症性の活性化をきたし,その組織像においてNASHの増悪を認めた.これまでの結果から,肝臓迷走神経はクッパー細胞に対してα7nAChRを介した炎症制御を行い,その進展の抑制に関与する可能性が示唆された.
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