研究実績の概要 |
癌研究には免疫系や微小環境の影響を検討できる動物モデルが必須である。大腸癌において私共が確立した自然発生によるマウス大腸上皮細胞特異的コンディショナルApcノックアウト(CPC-APC)マウスに、Kras, TGFβIIR,Ptenなどの別の大腸癌発癌ドライバー遺伝子の変異を1つ追加した複合的遺伝子改変マウスを作製し、高度浸潤癌や粘液癌のモデルを作製した。本研究では、ゲノム編集システムCRISPR-CAS9を使って(1)CPC-APCモデルに腫瘍特異的な転写活性を持つTOP/FOP Flash―luciferase(GFP)を組み込んだレポーター遺伝子マウスを作製し、リアルタイムで腫瘍サイズの測定が可能なマウスモデルの作製をめざした。(2)CRISPR-CAS9は他の動物種においてもゲノム編集が可能であり、CPC-APCマウスと同じ遺伝子変異を持つラットを作製し大腸上皮特異的Apcノックアウトを行い、ラット大腸癌モデルの作製をめざしてきた。本研究では、CRISPR/Cas9に必要なCas9の発現ベクターや配列特異性のガイドRNA発現ベクターが必要となるが、CPC-APCモデルに使用したトランスジーンの配列をもとにガイドRNA発現ベクターの作製を試みたが(1)リアルタイムで腫瘍サイズの測定が可能なマウス(in vivoイメージマウスモデル)では、CPC-APCマウスの受精卵に遺伝子導入してGRPやluciferaseのcDNAをレポーター遺伝子の作製を試みたが、完成することが困難であった。(2)ラット大腸癌モデルの作製については、まずCDX2のプロモーター領域9.5kbが大腸上皮特異的転写活性をもつかどうかを確認し、その下流にCre reconbinaseを結合した遺伝子改変ラットを作製する必要があるが、ラット大腸上皮細胞に特異的なプロモーター領域の同定が困難であった。
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