研究課題
本研究では、治療のターゲットとして、癌細胞の生存・増殖・浸潤・化学療法抵抗性などに関与するmicroRNAを同定し、さらにmicroRNA修飾分子内包人工ウイルスを作製し膵癌治療への応用を目的とする。そこで、治療候補となりうるmicroRNAの同定を行うために、膵癌の肝転移に関わるmicroRNAの同定を行った。ヌードマウスにヒト膵癌細胞株を同所移植を繰り返すことにより、膵癌高肝転移株を樹立した。ヒト膵癌細胞株SUIT-2を親株とする高肝転移株(MS:metastatic SUIT-2)において、遊走能及び浸潤能の増強を認め、接着能は逆に低下していた。また、Panc-1を親株とする高肝転移株(MP:metastatic Panc-1)において、遊走能は増強したが浸潤能は低下していた。接着能は有意な変化を認めなかった。網羅的解析の結果から、MSとMPにおいて共通して発現低下を認めたmiR-5100を同定した。このmiR-5100を強制導入したところ癌細胞の増殖能・遊走能・浸潤能の低下を認めた。さらにmiR-5100のbinding siteを持つ分子を検索し、複数の候補の中でpodocalyxin(PODXL)が標的分子の1つとなり得ることを示した。PODXLのノックダウンを行うと、miR-5100を強制導入した時と同様に膵癌細胞の遊走能・浸潤能が低下することを確認した。また、免疫組織化学染色を用いて解析を行ったところ、PODXLの発現と予後や肝転移に有意な相関があることがわかった。膵癌の肝転移に関わるmicroRNAとしてmiR-5100を、さらにその標的分子の1つとしてPODXLを同定した。MiR-5100やPODXLが、肝転移や予後に関わる因子として新たなマーカーや治療標的となる可能性を明らかにした。
3: やや遅れている
膵癌の肝転移に関わるmicroRNAとしてmiR-5100を、さらにその標的分子の1つとしてPODXLを同定することができ、肝転移や予後に関わる因子として新たなマーカーや治療標的となる可能性を示した。しかし、膵癌細胞特異的表面細胞マーカーに関しては、現在同定を行っている段階で、まだ人工ウイルス粒子の作成が行えていないため、③やや遅れているとした。
引き続き、膵癌細胞特異的表面細胞マーカーを同定し、これを標的に癌細胞を特異的に認識する人工ウイルス粒子の作成を行う。さらに、MiR-5100以外にも、膵癌組織と正常膵組織・非浸潤膵腫瘍組織からマイクロダイセクションを行い、癌に特異的に発現変化のみられるmicroRNA の同定を行い、その標的microRNA の修飾分子(precursor/Anti-miR)を内包した人工ウイルス粒子を作成する。
研究計画に若干遅れが生じており、まだ人工ウイルス粒子の作成が行えてないため。
試薬類、抗体、培養用試薬、培養用器具等
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