研究課題/領域番号 |
15K15501
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70237577)
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研究分担者 |
又木 雄弘 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 特任講師 (10444902)
前村 公成 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (30398292)
内門 泰斗 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 特例准教授 (30464465)
上之園 芳一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 特任准教授 (60398279)
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
蔵原 弘 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (70464469)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵臓癌 / N型糖鎖 / 腫瘍マーカー |
研究実績の概要 |
「糖鎖はがん化に伴い糖鎖構造が変化し,血漿中の糖鎖を腫瘍マーカーとして臨床応用できる」という知見から,「血漿中の臓器特異度が高い糖鎖マーカーの測定により,早期がんの発見,転移,再発の早期予測が可能となる」という仮説をたて,難治性の膵臓がんに関して高い精度で本仮説を検証するものである.申請者らはヒドラジド基(NHNH2)高密度含有ポリマー微粒子であるBlotGycoを用いて,糖鎖を効率よく捕捉回収する方法を行っている(特願2010-82438号) 今回,膵臓がん患者血清と健常者血清)に含まれる糖鎖を「糖鎖精製キットBlotGlyco®」を用いて精製・ラベル化し、MALDI-TOF-MSで測定・解析した。その結果,6個の質量電荷比(その内糖鎖に帰属:5個)が候補として挙がった。これらの各糖鎖について膵臓がん患者と健常者でのデータを解析した結果,すべての糖鎖で有意差が認められた.6個の糖鎖のうち,健常者と比べ,膵臓がん患者で低値を示した糖鎖が3個,逆に高値を示したものが3個みられた. 今回の研究で抽出された糖鎖の中で,膵臓がんに特異的な糖鎖があると考えられた.他のがん種との比較で膵臓がんとの関連性について検討が必要であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回のPilot studyで膵臓がん患者と健常者との2群間で糖鎖を測定し,有意に存在量が変化しているN型糖鎖を同定することが可能であった.当初は健常人に比し,有意な糖鎖が認められるか懸念があったが,6種類の糖鎖を同定することが可能であった. これまでの実験方法から,本研究方法はBlotGlycoを用いた新しい概念に基ずくN型糖鎖の同定方法である.この手法はわずか5時間で結果を得ることができ,操作は平易であり正確な精製と多検体を並列に処理できる利点がある.新たな臓器特異的な癌に対するN型糖鎖の発見は,検診をはじめ消化器癌の早期発見に有用になると思われる. 現在有意差の見られた糖鎖の中で,どの糖鎖が最も膵臓がんに特異的であるか検討中である.健常人と比して,腫瘍で高値を呈するものが理想的と考えらるが,そのような糖鎖が最も有意差が大きいわけではないため,さらなる解析を進行中である. 基礎的な実験経過はほぼ良好に進んでいると考えられるが,膵臓がん患者の血液サンプルの集積がやや当初の計画より少ないと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今回同定された6個の糖鎖に関して膵臓がんに特異的な糖鎖を探索していく.その方法として,膵臓がん患者に関して,経時的に血漿の糖鎖の発現パターンを解析し,病理組織学的因子と転移ならびに治療効果について検索する.さらに対象症例を経時的に糖鎖発現パターンを解析し,行った治療の効果判定で,治療効果のある症例と治療効果のなかった症例との間での糖鎖発現パターンを解析する.特に根治切除を施行例については,治療前と糖鎖発現パターンについて比較検討する. 症例の集積を行い,統計解析ソフト(SIMCA P+ ver.12, Umetrics社製)を使用し,健健常者と膵臓がんの2群間に対して,再度T-testを行い,最も有意差(p<0.01)を示す糖鎖を特定する.特定された糖鎖から,判別モデルを作成し,ランダムに抽出したサンプルが,健常者のものか,消化器癌患者のものかを判別し,そのSensitivity, Accuracy, Specificityについて検討する.さらに他がんで同定される糖鎖との共同性の有無について解析を行い,膵臓がんに特異的であることの確認作業を進めていく. 画像検査により,再発を認める症例について,画像所見より以前に糖鎖に変化が認められなかったかどうかについて検索し,より早期に再発診断可能となる糖鎖の検索を行う.
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