研究課題
膵癌は早期発見が困難であり、発見された時には進行癌で切除不能な症例が少なくない。また、放射線治療・化学療法など集学的治療の発達により徐々に治療成績の向上はみられるが、膵臓癌の腫瘍マーカーは、現在CEA,CA19-9,Dupan-2,Span-1 などで、進行癌でも陽性率は高くない。糖鎖は、タンパク質の翻訳後修飾をなす重要な生体分子の一つで、発生・分化・増殖・がん化などに伴い糖鎖構造が変化し、すでにCA19-9やSLXがシリアルLeグループの糖鎖抗原として臨床応用されている。最近、肝癌でフコシル化AFPが悪性度を示すバイオマーカーとして注目されるようになった。今回、膵臓癌患者を対象とし、血清中の糖鎖の網羅的解析を行い、膵臓癌に特異的な糖鎖マーカーを検索した。得られた糖鎖発現プロファイル解析で、診断の可能性を検討した。同意の得られた膵臓癌患者17例と健常者の11例の血漿から、タンパク質と修飾N型糖鎖を遊離、ヒドラジド基を有するビーズで遊離N型糖鎖を標識した後に精製分離、質量分析を行った。糖鎖を調整してMALDI-TOFから多変量解析という方法は定量性に乏しいと考えられたため、定量性のあるLC-MSで再測定を実施した。得られたデータをSIMCA-P+を使用し多変量解析した。網羅的解析を実施し、802個のイオン中9個のイオンが糖鎖マーカー候補として挙がった。得られた糖鎖の発現パターンをもとに、健常者群と膵臓癌患者群との間でOPLS法による層別化が有意に可能であった。また、健常者群と膵臓癌患者群間で、両者の層別化が可能な発現糖鎖が9つ抽出可能であった。以前に検討した6個の候補糖鎖のうち,今回のLC-MSで再測定解析では5個は有意差が認められ、再現性が確認された.膵臓癌患者のおける血清中の糖鎖の網羅的解析を行い、6糖鎖を抽出し、そのうち4糖鎖は再現可能であった。
すべて 2016
すべて 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)