研究課題/領域番号 |
15K15507
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸田 宏一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40379235)
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研究分担者 |
福嶌 五月 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80596867)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血管新生 / 徐放性製剤 / YS-1402 / 難治性潰瘍剤 / オキシム誘導体 |
研究実績の概要 |
創傷局所にオキシム誘導体(原薬)軟膏剤を投与することによる難治性潰瘍剤の開発検討として、オキシム誘導体のin vitro及びin vivo血管新生作用を検討した。 1.原薬のin vitro血管新生促進作用の検討として、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびヒト線維芽細胞(HDFa)の共培養下でHUVECの血管新生に対する原薬およびVEGFの作用を検証した.その結果,原薬及びVEGFはほぼ等しく、Contと比較して有意に血管新生促進作用が確認された。 2.ラット下肢虚血モデルに対する原薬のin vivo血流量改善効果の検討として、原薬を持続的に放出する軟膏剤に代えて、原薬を乳酸・グリコール酸共重合体に内包した4週間徐放性マイクロスフェアー(MS)製剤であるYS-1402を用いて、血流量増加(血管新生)作用を検討した。ラット右下肢虚血作製7日後に血流画像化装置(LDI)を用いて等しく群分けし、YS-1402の虚血部への局所単回筋注投与後、35日まで血流画像化装置(LDI)を用いて血流量増加作用を検討した.その結果、YS-1402の1,3および10 mg/kg群は,いずれも,用量相関的に血流量(LDI)の有意な増加作用(改善効果)が確認された. 以上の結果より,創傷治癒改善効果として、原薬の軟膏剤を創傷部位局所皮膚に投与することにより、持続的なONO-1301の放出が可能となり、新規な血管新生促進作用を有する難治性潰瘍剤となり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で用いているオキシム誘導体は、過去国内製薬会社により経口抗血栓薬として開発されたが、副作用(下痢等)と有効性(血小板凝集抑制作用)との乖離が少ないことにより開発が中断されていた。我々は、本オキシム誘導体が、血小板凝集抑制作用の1/10以下の濃度にて各種体内再生因子(HGF、VEGF、SDF-1等)を産生促進することを見出し、これらの体内再生因子により血管新生促進作用、抗線維化作用、抗アポトーシス作用、幹細胞分化誘導作用、抗炎症作用等から新しい適応症を見出した。また、本原薬を生体分解性高分子(乳酸・グリコール酸共重合体;PLGA)に内包することにより、新規な徐放性マイクリスフェアー製剤(YS-1402)を新しく見出した(ドラッグリポジショニング)。 現在、我々は、YS-1402をゼラチンシートに浸み込ませて心臓に貼付投与することによる血管新生・心筋再生治療薬として、新規な抗心不全薬としての可能性を検討している。 今回、YS-1402または原薬の軟膏剤(ヒドロカーボンゲル軟膏基剤)を作製し、皮膚潰瘍等の創傷治癒改善剤を開発したいと考えている。 軟膏剤そのものの検討はまだ実施できていないが、今回、下肢虚血モデルにYS-1402を単回筋注投与することにより、局所での血管新生促進効果から血流量が回復されることを確認した。 これらの結果から新規な血管新生促進作用を有する難治性潰瘍剤となり得ることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本薬は、難治性潰瘍剤をターゲットに限定しているが、様々な体内再生因子を持続的に放出させるという薬理作用から、本薬は再生創薬として、各種難治性の拡張型心筋症、虚血性心筋症、肺高血圧症、肺線維症、閉塞性動脈硬化症、COPD、慢性腎臓病(CKD)、脳梗塞、ALS等のモデルに効果を発揮している。 現在、難治性潰瘍剤としては、PGE1軟膏剤やbFGFスプレー製剤があるが、本剤は科学的に安定であり、局所で持続的な薬剤放出が可能となり、強力な局所血管新生促進剤として使用が可能となる。 本研究は、難治性潰瘍患者に対する新たな治療法としてQOLを飛躍的に高めることが期待できる。また、安価で根治的治療が可能となり、医療経済へも貢献すると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に毛細血管産生促進作用を病理学的の確認を行うため使用額が生じた
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次年度使用額の使用計画 |
CD31免疫染色にて、単位面積当たりの毛細血管数を測定し、血管新生促進作用を病理学的に確認を行う
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